【新規就農】農薬不使用はそんなに悪か(指導員との食い違い)
新規就農1年目。市役所の農業指導員がときどき通りかかって、いろいろと指導してきます。
この指導員はもちろん慣行農業を前提にしていて、「農薬を使わないのは農業じゃない」と前から事あるごとにおっしゃっています。「100円のキャベツを1日に100個売りなさい」というスタイルの指導をされる方です。
就農したばかりの私は、大きなトラクターを使い、農薬・化学肥料を使ってキャベツを1日に100個売るなんてスタイルは現実的ではないので、手間暇をかけて有機・自然栽培で少量多品種を作るというスタイルをとっています。もちろん、農薬や化学肥料が好きではないというのもありますが、だからといって、慣行農業を否定するものではありません。というか、慣行農業は社会にとって絶対に必要なものだと考えています。慣行農業か、有機栽培か、どっちが正か悪かなんてそんなものではなく、どちらも需要があるから成り立っていると思います。
この指導員は、農薬を使わない私のことを快く思っていないということは前から分かっていて、いつも後味悪い思いをするので、来られるたびにそれとなく話しを合わせてやり過ごしていました。
例えば、この畑を借りて間もない頃に「土がガチガチで痩せているので、微生物資材を入れました」と言ったら「そんなことはしなくていい」と言われたり、この前は「あの里芋は石川早生でもうすぐ収穫です、すごく美味しいんです」と言ったら「早生の里芋なんてぜんぜん美味しくない」とバッサリ切られたり・・・たぶん、単に私を気に入らないだけで、私が白だと言えば黒だと言い、黒だと言えば白だと言われるんだろうなと・・・そんな感じの人なので、私もあまりストレスに感じないようにサラッと流すようにしていました。
この指導員に、今日、以下のように言われました。
「あのな、有機農業は宗教です。ネットに書かれている農薬が危ないということを信じ込んでる浅はかな人たちの集まり。あれは農業じゃない。」
「農薬の安全性はしっかり確認されている。ラウンドアップが危ないという人がいるが、無知としかいいようがない。ネオニコだって、ハチを殺す農薬なだけで危ないことはなんにもない。ネットに危ないとか書いている人がいるが、あっさいあっさい知識しか持っていない。科学的に問題ないと証明されているのに、何が危険なものか。あなたも信じてるのか、浅はかな人は洗脳されやすいからな」
「持続可能な農業なんていうのは一過性のブームに過ぎない、そんなことも分からないのか。肥料の資源が枯渇するなんてことはあり得ない」
「固定種の野菜が美味しいなんて言う人は、舌がバカやねん」(あなたもその一人というニュアンスで)
なんでこんな話しになったかというと、私が今育苗しているカリフラワーの「野崎早生」とキャベツの「富士早生」が本葉が出だしたくらいで冬を迎えてしまうけれども大丈夫でしょうか?という質問をしたところから始まりました。
どちらも割と有名な品種だと思うのですが、どこの種苗会社?と聞かれたので、エバーノートにスキャンしていた種袋を見せて「固定種なんですけど・・・」と言ったら「なんでそんなのを使っているのか、F1を使わないと話しになりませんよ」ということでヒートアップされました。
ちなみに、この人の前で農薬は危ないなんて一言も言ってないし、ラウンドアップやネオニコの単語も全く出していないし、固定種でもF1でも、それぞれ美味しいもの、あんまり美味しくないものがあるということを知っているので、固定種だから美味しいなんて話も全くしていません。
「慣行農業は力持ちじゃない私には合わず、一方で無農薬の野菜の需要が高まって来ているので、それに合わせた農業をしようとしているだけです」と言っても、「宗教を信じるバカ」と完全否定されました。
そして、これまで我慢してましたが、バカ呼ばわりされた私はさすがにブチギレました。
「有機農業が宗教だなんて、私のことを浅はかな信者だと言いたいんですか?有機農業している他の農家さんすべてに対しても同じように思っているんですか?あまりに失礼じゃないですか!」
「私は農薬を否定してませんよ、むしろ社会に絶対必要だと言っているのに聞こえませんでしたか」
「私は科学者じゃないから農薬が安全か危険かについては何が正しいかわかりません、ただ、危険だと考える人がいて、農薬不使用の野菜の需要があるから、そういう人向けにビジネスをしたいと考えているだけです、いけませんか?」
「例えば大阪では○○○カブのような固定種を大事に育てている人もいますが、そういう人も信者扱いするんですか」
「固定種が美味しいだとか、味の話しは一言もしてませんよ、論点がずれてます。勝手に味の話しを持ち出してきたうえに、味なんて好みもあるのに、自分の舌が絶対に正しいなんてどうして言い切れますか、自分で思うだけならいいですけど、他者を侮辱するのはおかしいです」
「慣行農業か、有機農業か、どっちが正しいかなんて考えはそもそも不毛な議論です。それぞれメリデメあって、お互いを完全否定するものではないですよね」
「持続可能な農業というのは世界の潮流だと私は思いますけど、そう考えることがバカなんですか?」
「っていうか、市役所の人が、人に向かって浅はかだとか、宗教を信じるバカだなんて言っていいんですか!」
こちらが一言いうたびに、20倍くらいにして完全否定の言葉が返ってきます。その内容は、ここでは書かない方がいいと思うので書かないでおきます。
これは時間の無駄だと思ったので、全否定されっぱなしでしたが「分かりました」と言って、話しを終わらせようとしました。その顔は分かってないようですけど、まあいいでしょう、みたいな感じで言われてとりあえず終わりました。
「丹波黒大豆のエダマメは食べましたか?」と指をさして言われたので、「エダマメとして少し食べて、後は黒豆として収穫するつもりです」と答えたら、「エダマメで食べたら最高に美味かったのに、なぜ収穫しなかったのか」とまた非難され、私は黒豆で採りたいから置いてるのにどこまで否定すんねん、と心の中でツッコミを入れました。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、みたいな感じでしょうか。
丹波黒大豆はこれです↓そして・・・

「丹波黒大豆。これって固定種ですけど、美味しいと今おっしゃいましたよね?ほら、固定種でも美味しいものがあるとご自分で認めたじゃないですか」と言いました。
いや、これはところどころで改良されているはずで純粋な固定種ではないんじゃないか、むにゃむにゃ・・・と濁されました。なんじゃそりゃ。
「もう一度いいますけど、市役所の農業指導員が、有機農業を宗教を信じるバカなんて言わないでくださいね」と言ったら、驚いたことに、「宗教?そんなこと言ってませんよ?」と言われました。
さすがに「うっそー!!」と大きな驚きの声を上げ「何回も何回も言ったじゃないですか、なかったことにするんですか?ビックリです!」とちょっと呆れてしまいました。
そうすると「もし言ってしまってたら、すみませんでしたね、ただ、しょせん素人さんやな、というところです」と言われました。
こんなこと・・・指導者が、プロとして頑張っていこうとしている人に対していう言葉ですか・・・?
この最後に言われた言葉が一番悔しかった。この悔しさは絶対に覚えておこうと思います。
私もかなり生意気なことを言ってます・・・。指導員に対してなんて偉そうにするんだというお叱りはごもっともです。これまで溜まり溜まったものが爆発してしまいました・・・スミマセン。
新しく農地を借りる時、絶対にこの人を通すことになるんですけど、今後借りることができるだろうかという不安がありますが、バカ呼ばわりされて黙っていることはできませんでした。長時間、畑で言い合ってて周りの農家さん、ドン引きしてたかも。
ちなみに、有機農業も、雑草だらけにして周りの農家さんに迷惑をかけていれば罵倒されても仕方ないと思いますが、周りの農家さんとの仲は良好だと思います。また、新規就農の補助金をもらっていたりする場合もやはり指導員の言うことに従う必要はあるのかなと思いますが、私は一切補助金をもらっていません。
物事に対して、白か黒か、ゼロかイチか、正か悪か、なんて分けることはできない、何が正しいかなんて、時代によっても変わってきます。自然栽培をやりたいなんて、一昔前だったらもっとバカにされたかもしれませんが、環境保護、持続可能性、自然の枯渇などに直面している今、そんなに100%否定されるものではないと思うんですけど、農薬を使わないことがこんなにも憎まれるとは・・・。
でも、この指導員、「遺伝子組み換え」と「ゲノム編集」の違いも知らなかったんです。説明してあげたら、「いっしょやん」って言われました。はっきり言って、こんな基礎知識すら知らない人に何を言われても何の説得力もない。自分が正しいと思うこと以外は受け入れないタイプなのだと思いますが、人を罵倒するならば、自分が正しいと思うこと以外のことも幅広く勉強してからにしてほしいと思います。
夫に一連のことを話すと、「そりゃ向こうは農地の有効利用とか、食料をしっかり作らせるとか、農家の独り立ちとか考えて指導してるから、言わんとすることはわからんでもないな。しっかり稼いで見返してやれ」と言ってました。私もちょっとヒートアップしてしまって言い過ぎたところはあるので、反省してまた頑張ろうと思います。
ディスカッション
コメント一覧
たまたま記事を見つけました、
読んでいるうちにこちらも血圧が上がってしまいそうにムカムカ
いつか100倍言い返せるようがんばってくださいね
私もいわゆる有機農業の新規就農者です
まりこさま
初めまして。コメントいただきありがとうございます。
共感いただき、嬉しいです。ありがとうございます。
いつか100倍言い返せるように、両方の側面からいろいろ知識をつけないと
いけないなと思っています。(あとは、日々、夫で練習するのと・・・)
親からの継承じゃない新規就農に限ると、有機の人の割合がけっこう高いように感じます。
もうちょっと有機に理解のある指導者が増えてほしいなと思います。
はじめまして。当方有機JAS認証を取得している就農5年目の新規就農者です。去年の売り上げは数千万程度、雇用しているスタッフが10人程度の素人です。生産量、単価共に慣行栽培を上回り、一応食えてるけど、ダメなのかな 笑。
私はシンプルな農作業が肌に合ったのであまり考え無く有機を選択しました。私は宗教的なのかなぁ?
職員さんの方がよっぽど素人で盲信的で、ある種宗教的な気がしますが間違いでしょうか?お前が働いて稼いでから言えよと言いたくなりますね。
頭でっかちな人間と関わるのは大変かと思いますが、彼らは経験と知識を履き違えているので、心を乱されず、良い毎日をお過ごしください。
数年すれば移動して行きますので、それまでの辛抱です。
はじめまして。コメントありがとうございます。
就農5年目でその売上・・・すごいですね。
このブログの内容が有機農家さんの目に入ったら間違いなく気分を害されるだろうと思っていました。
ご不快な思いをお掛けして申し訳ございません。
UPするか迷いましたが、新規就農の人で有機農業や自然農を目指す人も多い中、ありのままを伝えたくて
ありのままを書きました。
きっと、Organic Farmerさんのようにきちんと「農業」ができていたら、ここまでバカにはされなかったのだろうと
思います。私の中に甘さがあるのも自覚していて、素人と言われても言い返せなくて、それがまた悔しいです。
Organic Farmerさんのようにきっちり稼げるようになって、ドヤ顔をしてやりたいと思います。
色々ありがとうございます。コメントいただいて、とても励みになり、また頑張ろうという気になりました。
ご返信ありがとうございます。
感情的なコメントになってしまい、お気遣いさせてしまって申し訳ありません。
有機かどうかは関係無く、就農したばかりの方に対する行政の担当の振る舞いが余りにもあり得ないと思い、思わずコメントしてしまいました。
ただ、程度の差はあれ、どこの町にもそういう指導員、普及員はおられると思いますので、経験上彼らとは論じ合わず、頭を下げたふりをしながら淡々とご自身の営農で結果を出して行くしか無いのかなとも思います。
指導員は指導員で居る限りずっと素人です。
農家は就農したからにはプロです。
良いプロになる事を目指して、新規就農者同士お互い頑張りましょう (^_^
ありがとうございます。結果を出しておられる方からの励ましは心強いです。
通っていた農業スクールで、「最初は有機でやりたいというのを全面的に出さない方がいい」と
言われていたことを思い出し、なるほどなと実感しました。
今後も同じような悔しさを経験することもあると思いますが、本当におっしゃる通り、
いちいち気を乱されていたら勿体無いので、淡々とやるべきことをやり、結果を出していきたいと思います。
更新頻度は少ないですが、これからも近況をUPしていきますので、よろしければまたアドバイスくださいませ(^-^)
私は実家が田畑をやっておりいわゆる田舎の兼業農家の生まれです。
そしてそれを継がずに別の仕事をしておりますので、新規就農の方をすごく応援したいとは思っています。
少し読んだ印象では、もしかしたら根本的な基本的な当たり前のことを質問されたりしたいたのではありませんか?
最初は何でも聞いてきたのに、そういう人が自分で歩いていこうとすると、それに文句を言いたくなる人はいるかもしれませんね。
特に上から目線の自称知識人のような人は。
今のご時世本物の職人というような技術がいるものでなければ、こういっては失礼ですが野菜果樹などはネットで調べた知識で十分できます。
最低限度野菜が作れるなら、あとは経営の力の方が必要でしょうね。
そういう意味で担当に頼らざるを得ないのであればある程度従うのも仕方ないのかもしれません。
ネットでは分かりきらない複数の根拠があったりメリットデメリットがある場合に、土地環境自分にはどちらが向いているのか、そういうところを信頼できる地域の仲間やプロに聞くのがいいと思います。
人の考え方相性がありますから、どうしても合う合わないがあります。
言い返すことは悪循環しか生みません。
現実に手を動かし作業するのは自分なのですから、相手の意見を聞くだけ聞いておいえ、実際には自分の思うようにするやり方がいいと思います。
また相手が公務員ということなら、相手とこちらの言い分を箇条書きに、態度や言い方などを分かりやすくして、内容証明等で公の機関に申し立てると効果があると思います。
少なくとも態度が悪いというのは意見が合わないのとは別の何か問題があるのだと思います。
担当を変えて貰うくらいはできるのでは。
人が生きる上でもっとも大事なのは人間関係だそうですので。
大変でしょうが頑張ってください。
しん様
丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます。
この日のことを思い出しては、なぜこんなことになったのだろうと思い返しています。
「農薬を使わないと農業ではない」と前々から言われており、私はそれを無視して農薬を使わず、
案の定まともに「農業」ができていない状況で、それみたことかという意識が指導員側にはあり、
それを感じた私は、言い返すことでしか正常心を保てなかったのかもしれません。
今は、収量は少ないけれども大体のものは収穫はできます。おっしゃるように、どういったものが
売れるのか、どれくらい育てればいいか、どこに売るかといった経営力が私には足りないと自覚しています。
きちんと自信を持って「農業」ができていれば、誰に何を言われてもスルーできていたと思います。
ここまできちんとできた上で、また何か言われた場合は、しん様のアドバイスに沿って、申し立てなどを
考えたいと思います。ありがとうございます。
おっしゃる通り、言い返すことは悪循環しか生まないですね。
私もまだまだ学ばないといけないことがたくさんあるのに、大声でケンカしているのを他の人も見ていたでしょうし
近寄り難い人という印象を周りに与えたかもしれません。
この日のブログも、公開していることでいつも心のどこかにザラっとしたものがある感覚なので
近いうちに非公開にするかもしれません。せっかくコメントをいただいたのに申し訳ございません。
人が生きる上でもっとも大事なのは人間関係・・・人間関係次第でモチベーションが
上がったり下がったり、それによって体調にも影響したりしますので、本当にその通りですね。
私はどうも真正面から受け止めてしまうタイプなので、“うまくやっていく”ということも
習得したいと思います。
真摯なアドバイスをありがとうございました。