【差別化戦略】大阪府のエコ農産物の認証を取得しました
就農してから4回目の夏が終わろうとしています。
なかなかハードな夏を過ごしており、ブログの更新が滞っていましたが、久しぶりに更新します。
「ハードな夏」の中身や最近の畑の様子も書きたいところですが、それはまた後日書くとして、今日は、大阪府のエコ農産物の認証を取得した件について書いていきます。どうぞお付き合いくださいませ。
大阪府のエコ農産物について
まずは大阪府のエコ農産物の認証とは、ですが、大阪府の認証制度で、農薬・化学肥料を減らす、または使わずに育てた農産物に与えられる認証です。以下の3段階あり、1→2→3と厳しくなります。
1.農薬・化学肥料5割減
2.栽培期間中 農薬・化学肥料(チッソ)不使用
3.栽培期間中 農薬・化学肥料不使用
今回、私が取得したのは3の「栽培期間中 農薬・化学肥料不使用」です。
エコ農産物の制度は大阪府以外にもあり、基準はそれぞれの県で若干異なって「この県のは厳しい」等あると聞いています。大阪府のは、基本的に有機JASと同様の栽培になるので(有機JASと異なる部分は後述)他の自治体のを調べたわけではないですが、なかなか厳しいんじゃないかと思っています。
なぜ認証を取ろうとしたか
理由は2つ、一つは差別化戦略として、もう一つは自分の野菜に自信を持ちたかったから、です。
前者の「差別化戦略として」に関しては長くなりそうなのでまた後日改めて書きますが、後者の「自分の野菜に自信を持ちたかったから」というのは、次のような背景があります。
「言ったもの勝ちだなぁ・・・」と感じることが多くなった
小規模で農薬や化学肥料を使わずに育てている人は多くいます。その中には農業としてやっている方もいれば、知り合いに畑を借りて家庭菜園的にされている方もいます。今は「C to C」の時代、販売先はいろいろあるので、普段は家庭菜園でも販売しようと思えばいくらでもできます。
農業としてやっている人は、研修会とか講習会が頻繁にありますし、直売所などからいろいろ厳しく指導されるというのもあって、いろんな制約やルールを守りながら販売している人がほとんどかと思いますが、大変失礼ながら、家庭菜園的にされている方の中には「ちょっとゆるいなぁ」という人を見かけることがあります。
特に「無農薬」とか「自然栽培」とか「自然農法」とかをうたって販売されているのをよく見かけます。ご存知の通り、ガイドライン上はこういう表記はダメとなっています。
<参考>農水省 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html
このガイドラインの是非はさておき、理由があってこういうガイドラインができたはずなので、家庭菜園の方でも販売するからには守ってほしいと思います。
「無農薬」は、種子消毒として農薬が使われていたり、普通に販売されている苗はほぼ農薬が使われていたりで、本当の無農薬はなかなか難しいです。
化学肥料不使用というのも、以前受講した有機JASの講習会で教わりましたが、例えば油カスだと油を絞る際に化学物質の溶剤を使っていることがあるということで、有機JAS認証では化学物質の溶剤を使われていない油カスのみOKとなっています。なので有機質肥料であっても本当に化学的な処理がされていない有機質肥料なのかどうか、ちゃんと見極めないといけないです。
「自然栽培」「自然農法」も定義が曖昧で消費者を混同させてしまう恐れがあるということからダメとなっていると思います。
「自然栽培」についてですが、私自身も新規就農した直後は「自然栽培でやりたい」と考えて、ブログでも「自然栽培」と書いたりしたこともありました。でもいろいろ勉強したり経験していくにつれて、「真の自然栽培」というのは本当に厳しく、有機質肥料すら与えないという農法であって、よっぽど土がしっかり出来ていないと野菜はまともに育たないということが分かりました。
そして「真の自然栽培」で収量を確保し、生計を立てている農家さんは本当にすごいと思うようになり、「自然栽培」という言葉を安易に使ってはいけないということを身をもって理解しました。安易に「自然栽培」と言っていた当時のことを今ではすごく反省しています。
なので、自戒も込めて書いているのですが、「自然栽培」を厳格な自然栽培の意味として言っている人もいれば、「広義の意味での自然栽培やねん」とか言っている人もいて、人によって捉え方が本当にマチマチで、これは確かに消費者を惑わすと思いました。中には、広義の意味でもそれは絶対自然栽培じゃないよね?というのも見かけます。
こういったことから、消費者を混同させないように「『栽培期間中 農薬・化学肥料不使用』ならばOK」とガイドラインが定められているのだと思いますが、ガイドラインなんて一般の消費者はほとんど知りませんし、無農薬にしろ、自然栽培にしろ、正直「言ったもの勝ちだなぁ・・・」と感じることが多くなりました。
蛇足ですが、今では、真の自然栽培で農業をするのはほぼ無理という結論を自分の中で出しており、追求したいという欲求も今はありませんので、うちの農園が目指すべき農業スタイルは自然栽培ではないと思っています。環境にできるだけ負荷をかけない、農薬化学肥料除草剤は使わない、というのは変わらず、その上できちんと収量を確保して販売し、商売として成り立つようにしていくというスタイルを目指しています。
「自称」ではなく、第三者から認められてきちんとしたかった
私は、以前のマルシェ等では「栽培期間中 農薬・化学肥料不使用」と表記していましたが、上記のような背景もあり、いつの頃からか「私も不使用言うてもしょせんは自称やし・・・」と、やさぐれて(?)、何の表記もしなくなりました。
ホームページ上で、使っている資材やどういう考えのもとで農業をやっているかを公表したり、割と近隣にお住まいの方にフォローしていただいるインスタの方でも、今日はこういう資材を投入したとかをできるだけオープンにしたりで・・・、もうそれでいいねん、分かってくれる人に分かってもらえたらいいねんと。
販売中に「もっと自信を持ってアピールしなきゃ!」って言われたこともありますが、「スーパーの野菜と違って美味しいよ〜」と言ってる人が近くにいる状況で、私は一体どういうアピールしたらいいんだろう・・・と、全く分からなくなり、何も言えなくなっていました。
そして、「やさぐれ野郎」を通り越して「ダメダメ野郎」になり、自分の野菜を自信を持って販売できなくなってしまいました。昨年は農地の移転もあり、販売できる野菜も少なくてネガティブになりがちだったので尚更・・・。
自分の売り物に自信を持てない人の商品を誰が買ってくれる?と理解しているものの、何か、分からなくなってしまいました。
そういう中、農地がらみの手続きで訪れた市役所に置いてあった「エコ農産物」のパンフレットに目が留まり、チャレンジしてみようかなと思うようになりました。この認証が取れれば、ちょっと自信が持てるかもしれないと。
なぜ有機JASじゃなく??
有機JASと同様の基準なのだったら有機JASを取ればいいんじゃないの?というところですが、次の点でエコ農産物の方がとっつきやすいのです。
まず、費用がかからないこと。行政が認証してくれるので、基本的に無料です。(他の自治体はどうなのか知りませんが。)圃場まで調査しにくるのも、一番最初にJAの方が見に来るだけでしたので、この旅費も要りません。
そして、有機JASは確か「圃場単位」での認証だったと思います(うろ覚えですいません)。なので同じ圃場で植え付ける例えば自給用のものも全てを記録しないといけないし、その圃場に投入する資材すべてのものを記録し、移行期間を経た上で認証となったかと思います。一方、大阪府のエコ農産物は「作物単位」で申請になるので、元肥に何を入れたかからスタートするので、割ととっつきやすいです。
あと、大阪府内で販売するには、その気になればいろいろと行政が宣伝してくれたり、スーパーではエコ農産物を購入した方に別途ポイントがついたりして、地元の推しという感じのメリットも大きいです。
このエコ農産物ので書類の書き方などいろいろ含めて練習し、ゆくゆくは有機JASに移行しようかなとも思っているので、現時点でも今回購入した畑は丸ごと有機JAS基準のやり方で運営するようにしています。
デメリット
ただやはり、認証を取るというのはデメリットもあります。
適合資材しか使えない
当たり前ですが、有機JASと同じ基準になるので、有機JAS適合資材しか使えないこと・・・つまり、コイン精米所の米ヌカが使えないです・・・。
なので、これまではコイン精米所の米ヌカを使って自家製ぼかし肥を作っていましたが、これを機に、有機JAS適合の市販のボカシ肥を使うようになりました。
ちなみに、私が有機JASの講習会を受講した3年前の時点では、使う資材は自分で資材メーカーから原材料と製造工程の資料を取り寄せて、自分自身と認証機関双方で有機JAS適合であることを確認しないといけないと言われ、その負荷がかなり大きくてドン引きしていましたが、今はそこは改善されたようで、農水省のホームページに登載されている評価済資材リストに記載があればOKとなったようです。
<参考>農水省 有機JASの運用改善について (令和3年10月1日)
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html#kaizen
肥料等の資材だけでなく、苗関係も有機JAS基準になるので、普通に園芸店で売っている苗は使えなくなり、ちょっとお値段の張る有機JAS基準の苗をネットから取り寄せて使うことになりました・・・。
事務負荷
どんな認証でもそうでしょうけど、やはり事務の負担もあります。きちんと記録して、申請から報告まで、いろんな書類を出さないといけないので、最初は尻込みしました。ワンサイクルやってしまうとずいぶん慣れて大したことないと思えるようにはなりましたが・・・
そして認証ラベルを自分で作ったりと言う手間もあります。ラベルって自分の名前等印刷したものをもらえるのかとなぜか思い込んでいましたが、自分で作るんですね笑。そりゃそうかと思いますが、定められた大きさ以上のラベルになるように、まずはちょうど良い大きさのシールを探して購入し、ワードの差込印刷を駆使して何とかラベルを作りました。
今は、農業に限らず、トレーサビリティ、HACCAPなど、あらゆるところで厳正な工程管理が求められる時代なので、何をするにも事務処理能力というのは必要なのだろうと感じています。うちみたいな零細農家だと、人を雇えるわけでもなく、夫は平日は会社員ですし、何から何まで自分でやらないといけないのでちょっと大変です。
1作物につき100平米以上
大阪府の基準として、エコ農産物の申請をするには1作物につき1アール(100平米)以上育てないといけないという条件があります。
購入した畑は961平米ですので、申請できる作物数は限られます。(もう1箇所、半反ほどのお借りしている畑がありますが、現時点では、エコ農産物は961平米の圃場で育てるものだけにしようと考えています。)
うちはもともと少量多品種で育てているので、1作物100平米以上というのはちょっとしんどいかなと思いましたが、やってみるといくら少量多品種とはいえ、1作物でこれくらいのロットを作った方がしっかりと売り物を確保できていいかもということに気づきました。今までは少量すぎたかもしれません。
しかし、夫の希望でニンニクも申請することにしたのですが、100平米以上の種ニンニクを購入した時はなかなかのお値段になり、手が震えました・・・下の写真は一部です。絶対失敗できん!!
という感じで、ゆっくりではありますが一歩ずつ前に進んでいます。
他の認証として、GAPや、8月25付農業新聞に載っていたPGS等も興味がありますので、おいおい調べていきたいと思います。
ブログに書ききれていないのですが、他の点でも新しいチャレンジをしていますので、またご報告します。
いろいろチャレンジしつつ、その前にしっかり収量を確保しないと話にならないので、野菜栽培の腕前を磨くというのが最優先ですね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません