農業スクールの先生からのアドバイスと農地法改正について

年が明けて、初めてブログ更新します・・・

決して怠けていたわけではなく、色々と書きたいことはあったのですが手が追いつかず、ブログが後回しになってしまいました。

書きたいことは、

・確定申告について
・インボイス制度について迷っていること
・土壌検査の結果について
・今年の春夏の作付けについて
・squareのペイペイ決済が超便利なこと
・農地法改正について(私にとってはすごく大きなニュース!)

と色々あり、何から書こうか悩むところですが、先日、久しぶりに農業スクール時代にお世話になった先生とお話しする機会がありまして、とてもとても勉強になったので、まずはそれについて書こうと思います。長文になりますが、最後までお付き合いくださいませ。(最後の方に少しだけ農地法改正について触れます。)

人生の岐路となった先生と久しぶりにお話しした

新規就農する前、私は会社を辞める準備と並行して京都にある社会人向け農業スクールに通っていました。

この農業スクールは新規就農を目指して通っている人が多かったのですが、正直にいうと私自身は、当時は本気で農業をするつもりはありませんでした。

じゃあなぜ通っていたかというと、幼いころから台所から持ち出したジャガイモを勝手に庭に植えたりして植物を育てるのは好きという土台が元々あったのか、会社を辞めようと決意した時にたまたま目についた農業スクールにとりあえず通ったという感じです。

でも、体力もないし、日焼けも虫も苦手でしたし、汗をかくのもあんまり好きじゃない・・・。どちらかというと、料理を仕事にしたいと考えていました。(料理も体力仕事ですけど。)

農業をやるとしてもせいぜい「半農半X」がイメージに近かったと思いますが、当時は「半農半X」っていう言葉すら知りませんでした。農業スクールに入学する際のアンケートに「半農半X」という言葉が書いてあって、なんですか、そのハイカラな単語は・・・と思ったけれども、恥ずかしくて聞けなかったのを覚えています。

だけど人生って不思議なもので、結果的に今、新規就農をして農業をしています。

振り返ってみると農業スクールに通ったのが人生の岐路になったわけです。これまでの人生の中で「あの人に会ったのが人生の分かれ道だったな」という人が何人かいますが、この農業スクールで出会った先生は確実にそのうちの一人で恩人です。

その先生と先日、久しぶりにお会いし、少しの時間ではありましたが話をすることができました。

その中で大きな気づきがいくつもありましたので、ここでシェアさせていただきたいと思います。読んでくださっている方の参考になることがあれば嬉しいです。

有機農家はメンタルを病んでしまうことが多い

この農業スクールの卒業生だけでも新規就農している人はたくさんいるので、先生はものすごくたくさんの農家をご存知です。そして、話してくださったのが「有機農家はメンタルをやられてしまう人が多い※」という事実です。

※本当はもっとダイレクトな表現でしたが、ここでは「メンタルをやられてしまう」という表現にしておきます。

なぜ病んでしまうのか、その理由は「忙しすぎるから」とのこと。

え?親からの世襲じゃなく新規就農して、しかも有機農業、大きな夢を抱いて始めただろうにメンタルやられてしまうなんてあるの??と最初は少し不思議に思いましたが・・・、すぐに、言われてみるとそうかもしれない、と分かる気がしました。

というのは、私自身も、農業をして後悔したことはないものの、「家庭菜園は気楽やったわ・・・」と、時々ため息をついてしまいます。

農業に限らずなんでもそうですけど、プロとアマチュアの違いってものすごく大きいです。私は楽器をするので楽器の分野でプロとアマチュアの間での壁の高さというものを常々見てきたのですが、農業でも同じだなと実感しています。

例えば、自給のためなら自家増殖もそんなに気にせずにできたものが、今では気軽にできなくなったように、法律関係も知っておく必要があります。また、「売る」という作業として、収穫後、販売するまでの調整作業の負担がめちゃくちゃ大きく、これにかなり時間が取られます。この出荷前の調整作業というのは大変だと事前に聞いていましたが、想像以上でした。有機農家だと少量多品種でされている人が多いと思いますが、手間もそれだけかかりますし、虫がついてないかというチェックも相当な神経使います。

それ以外に、販売戦略を練ったり営業マンも自分でやらないといけない、経理作業や確定申告も大変、資金管理も必要、消耗品や備品をどこから買うかなどの購買、栽培記録、また、人様の口に入るものなので品質管理に気を配ったり・・・と、家庭菜園にはない多くの事が必要になります。

会社員のように労務管理をしてくれる人もいないので、就業時間は「起きてから寝るまで」という感じにもなりがちです。(合間に主婦業。)

自分で商売をするというのは、売った分だけ収入につながる楽しみはありますが、逆もまた然りで、売らないと収入がないわけで、やりたくて始めた仕事なだけにエンドレスに働き、気づかないうちに疲労が溜まってしまう・・・。そして病んでしまう。

「有機農家はメンタルやられる人が多い」という事実を聞くまでは、「自分でやりたくて始めた仕事で、太陽の光を浴びて季節を感じながら仕事をしていて、メンタルやられるなんてそんなことあるはずがない」と心のどこかで思っていました。だけど、ハッと気付かされました。

そう言えば私も昨年の秋から年末にかけて、畑の管理に加えて、家庭でのちょっと重い用事や心労が重なって眠れないことが増え、謎の全身蕁麻疹にも悩まされたりしていました。家の中もすごく散らかっていて、本を読もうとしても内容が頭に入ってこない、あげくの果てには最近いつ笑ったっけ?という状態で、今から思うとちょっと危なかったなと思います。

メンタルやられてるというのは自分でなかなか気づきにくいので、意識的に休養をとったりしないといけないし、「やりたくてやっている仕事だからメンタルやられるなんて、あるはずない」という思い込みは危険だなと認識しました。

自分のライフプランを明確にすること

じゃあメンタルをやられないようにするにはどうすれば良いのか。

基本的に農業はブラックだということを認識した上で、自分がどのような人生を送りたいのか、まずはライフプランを明確にすべきとのことです。例えば、家族と過ごす時間を一番大切にしたいのなら、それを中心に人生設計して、農業に避く時間はこれくらいにして・・・というように。

確かに、一口に「農業」と言っても有機認証を取得して大規模に収益を上げている方もいれば、週末だけの農業で物々交換的な農業をされている人もいます。

自分のやりたいようにできるというのはメリットですが、農業という限りビジネスなので、自分はどれだけの所得が必要なのかを考え、そこから逆算してどれだけの売上げが必要かを計算し、そこを目指して働くといいですよ、とのことでした。何も考えずに突っ走ってると無限地獄になってしまうし、大切なものを見失ってしまう、そして病んでしまう、それは本意じゃないですよね?とのこと。

この話を聞いて、『7つの習慣』を思い出しました。

大切なものを見失わないように・・・

野菜は売れてしまうだけに危険

なぜ有機農業がこういうことに陥ってしまいやすいのか。

「例えば、手作りの置物とかってお店に置いててもそうそう売れないですよね?でも、野菜って売れてしまう。だから危険なんです」とのこと。

売れてしまうだけに、どんどん作って売る、他の人も同じようにどんどん作って売る、そして価格競争になる、ますますたくさん作らないといけなくなる、エンドレスで働いてしまう・・・そして疲弊してしまう。

だから、価格競争に陥らないようにすることがとても大切、とのことです。

「独占」状態を目指すべし

具体的にはどうすればいいのか。

「価格競争に陥らないようにするには、独占状態を作ること。独占状態は、商売をする上で最も稼げる形態ですよ、

そのためには、これだけは他の人に負けないというのを見つける必要があります、

自分で分からないなら人から教えてもらうというのもありです、例えば、特定のお客さんがいつも買ってくれて、どうしてうちのをいつも買ってくれるのかと聞いてみると『あなたのところはこういう良いところがあるから』とお客さんから教えてもらえたりもします、

メルカリなどのネットショップも、価格競争に陥りがちなのであまりオススメはしないけれども、やってみて初めて自分の商品の良さに気づくことも多いので、勉強のためにやってみるのもいいですね、

直売所でレジに立たせてもらって、どういう野菜が売れているのかを見学させてもらうというのが一番手っ取り早いですけど、不審者みたいに思われてもダメなので笑、食べチョクなどで、売れてる農園のものを買ってみて、なぜこの農園のものが売れているのかを探るというのもとても勉強になりますよ、どのように梱包されているのか、お礼のメッセージがどのように書かれているのか、とかね」

ということでした。

自分が機嫌よくいられるお客さんと取引すべし

野菜は売れてしまうだけに、不特定多数のお客さんを相手にするわけですが、どういうお客さんに売りたいのかを考えるのもとても重要とのことです。

なぜなら、苦情ばかり言ってくる人がお客さんだと、時間も取られてメンタルもやられる、そしてしんどくなるだけ、自分が気持ちよくいられる人と取引する方がいい、ということです。

自分が機嫌よく仕事してると、機嫌の良い人のところには機嫌の良い人が集まってくる、その結果、とてもいい仕事ができますよ、ということでした。

頭を使って考えて、まずはやってみること

これまで、お客さんを選ぶだなんておこがましい、そんな贅沢なこと言ってられへん、と思っていましたが、自分の商品に自信を持てるならばできそうな気がします。

また、独占状態を作るためには、先生とお話ししてアイデアが二つ三つ浮かんできましたので、ちょっと具体化に向けて考えてみます。

もうすぐ就農3年目を迎えますが、これまでガムシャラにやってきたところをそろそろ頭を使って考えて行動しないといけないなと改めて認識させられました。この先生は、知恵を使って考えた上で失敗してもいいからとにかくやってみなさいというようなことをいつも言っておられます。

「もちろん、大前提として、」と念押しされてましたが、「野菜が美味しいというのは絶対条件です」ということです。

農家って、ほんと大変だわ・・・。

ちなみに先生は、自分のビジネスをどれも実らせておられます。決して口だけの人ではないというのをよく知っていますので、話に説得力があり、耳が痛いと思うときもありますが、いつも素直に聞いております。

農地の購入について

ところで、先生に、もうすぐ就農3年目なのでぼちぼち農地を購入することを考え始めているということを話しました。

私は以前にも書いたと思いますが、「小さくてもいいからいつか農地を買いたい」と考えています。買わなくても十分安い値段で借りられるのだから買う意味はないのでは?と思われるかもしれませんが・・・っていうか、ダイレクトに「大丈夫なん?」ってところですよね。

なぜ購入したいのか、この辺りはあくまで私の考えになりますが、別の機会に詳しく書きます。

もちろん、農地を購入すると、今後ずっと管理しないといけない義務も出てきます。実際、私一人ではしんどいので、夫と共に管理するということになりますが、たとえやる気があっても、どちらかが病気したりする可能性もありますし、軽々しくは決断しない方がいいとは思っています。

購入したいという話をして、先生の反応としては、「農業はビジネスですが、ビジネスというのは必ず撤退プランを考えておかないといけないんです、購入してしまうと撤退できなくなりますからね、慎重に考えた方がいいですよ」という反応でした。

本当に・・・ごもっともです。

農地法の改正(朗報!)

現実的な話として、買いたいと思っていても、農地の購入は農業委員会の許可が必要です。

新規就農する際、恥ずかしながら、市役所の農業委員会に「農地を購入したいのですけど!」と言いに行って撃沈したことがあります。詳しくは↓のブログに書いていますので良かったら見てくださいませ・・・。

○【農地探し(前編)】農地を借りるまでの経緯
https://pocoapoco-bio.com/nochi-uyokyokusetsu/

この時に農業委員会の人に言われたのが、「農地を購入するには、2000平米以上を耕作していること、加えて3年の耕作実績があることが条件」ということ、そして、

「焦る気持ちもわからんではないけど、準農家として登録しているなら農地を借りることはできるから、まずは農地を借りたらどうや。そして3年、そこで頑張ってみなはれ」ということでした。(この辺は自治体によってかなり違うのですが、あくまで堺市の場合です。)

というわけで、農業委員会の許可を得て農地を借りて新規就農し、夫とともに「とりあえず2000平米まで耕作面積を増やそう、そして3年頑張ろう」と、購入条件をクリアすべく、これまで頑張ってきました。

現在は、約1500平米を耕作中、もうすぐ丸2年になります。

3年まであと1年ちょいというところまできた現時点で、「2000平米の条件は農地法での絶対事項だから購入する農地は500平米以上のところを探すとして、耕作実績の3年という条件は、絶対事項なのかな?」という疑問があったので、はっきりさせようと、先日、また農業委員会に相談に行ってきました。

絶対顔覚えられてるだろうし、また面白いやつ来たでと思われるんだろうな・・・といぶかりながら相談してみると、なんと!!

農地法改正により、令和5年4月1日から2000平米の条件は撤廃されるという話をしてもらえました。(恥ずかしながら、この時点まで2000平米の条件が撤廃されたことを知りませんでした。やっぱり農業新聞購読した方がいいかも・・・)

ということは、あと500平米も必要なく、狭いところでもOKということになります!あと500平米はちょっとしんどいなと思っていたので、これは嬉しい、やったー!!

○ご参考:堺市農業委員会のページ「農地の取得について」
https://www.city.sakai.lg.jp/sangyo/nosui/nogyoinkai/shutoku.html

そして、もう一つの条件の「3年の実績」は絶対なのかを聞いてみると、農地台帳の私と夫の登録内容を見て「あぁ、これならもう実績として認められて許可が降りると思います」ということでした!まだ丸2年も経っていない現時点で、です。

3年という条件は一応の目安で、きっちり3年をクリアしないといけないというものではないとのこと。「購入しようとする農地が自宅から遠方でちゃんと耕作できるのかという懸念がある場合は許可が降りない場合もあるけれども、まぁ大丈夫でしょう」ということでした。嬉しい!!やったー!!

ということで、念願の、農地を購入する条件がクリアできました!

ただ、前述の通り、冷静になってよくよく考えて行動しようと思っていますので当分先かな、とは思いますが、とはいえ、農地購入のハードルが下がったということは購入希望者が多くなることが予想されますし、食糧危機になった場合はますます取り合いになるかもしれないので、機会を逃さないようにはしたいと思っています。

なお、この辺りの話は自治体によって大きく違いますので、もし同じように購入を考えておられる方はここに書いていることは参考としていただいた上で、お住まいもしくは農地のある自治体に直接聞きに行ってくださいませ。それが一番間違いがないです。


約2ヶ月ぶりのブログ更新となり、また調子に乗って長文となってしまいました。

もうすぐ冬も終わり、農家としては嬉しい春の到来、病気しないように気をつけながら今年も頑張ります。ブログももうちょっと頻度を上げて書きたいと思っていますので、またお付き合いくださいませ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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