【農地探し(前編)】農地を借りるまでの経緯
農地を借りてこの春で1年になります。ずっと広い農地を借りたいと願っていたのでとても幸せな1年でした。
農地を借りたいと考えてから実際に借りるまで6年ほどあり、それまでの紆余曲折やその間に考えたこと、実際に借りてみてどうだったかなど、農地を探しておられる方の参考になることもあるかもしれないと思い、この記事を書きたいと思います。
1.農家じゃないので「準農家候補」に登録
農家じゃない人が農地を借りたり買ったりすることはできないのは、この記事まで辿り着いた方ならばご存知かと思います。
私も農家じゃないので普通だと農地を借りることはできないのですが、大阪府には新規就農しやすいように農家じゃない人でも農地を借りることができる「準農家」という制度があって、私はかれこれ6年ほど前にこの「準農家候補」として登録してもらっていました。
「準農家候補」に登録してもらうには、審査があります。応募したきっかけは、会社員を辞めた直後に通っていた社会人向け農業スクールで強く勧められたからです。
当時は・・・ぶっちゃけて言うと、真剣に農家になるつもりはなかったのですが、会社を辞めていたので出来ることは何でもしておこうと考え、このスクールでサポートしてもらって、営農計画書を提出したり面接を受けたりして審査を通って合格したという感じだったと思います。もうずいぶん前なのでうろ覚えですが、なかなか大変だったように記憶しています。
この農業スクールは2週間に1日の1年間のスクールで、通う前は家庭菜園すらまともにやったことがなかった私ですが、こんな私でも何とか審査に通りました。
2.市民菜園に限界を感じるように
その後3年ほどは家庭の事情もあって放置。農地の斡旋も最初の頃に1回か2回くらい来たような記憶がありますが、その後は全くなし。もしかしたら毎年申請するとか何かアクションがいるのかな、そもそも「準農家候補」はもう抹消されたかな、などと思っていましたが、調べることもなく、放置していました。
その間、夫と趣味的な感じで市民菜園で家庭菜園をしていました。
市民菜園の契約内容は、次の内容です。
・1区画25㎡
・4月から2年間、3万円
・契約が終わると更地にして返却
・次に借りるところは抽選で決まる
・営農は禁止
基本的に1家族1区画しか借りられないのですが、かなり空き区画があるということもあり、2区画くらいまでなら暗黙の了解で借りることができていました。
でも・・・頑張って土を育てても2年経てば別の区画になることや、3末で一旦更地にして返すので冬越し野菜ができないできないこと、そして2年で3万円(2区画なら6万)がちょっと高いなどを考えると、市民菜園に限界を感じ始めました。また、先行きのことを考えて、食糧確保や収入を得る手段にもしたいと思い、広い農地を借りたいと真剣に思うようになりました。
3.農地探しに当たってウダウダ悩む
農地を借りたいならば、今から思ったら、真っ先に市役所に相談に行くのが近道でしたが、お役所に相談に行くとものすごく不便なところを当てがわれて断れないんじゃないかなどと勝手に思い込んで、市役所に相談に行くのは最後の手段という風に思っていました。
「成功する人は考える前に行動する」と聞いたことがありますが、私はあれこれ考えてしまうタイプで、直さないといけない欠点です。
他にもウダウダと悩み、一例を紹介すると、
①広大な農地が広がる中でポツンと1箇所借りられたとしても、新参者が無農薬でやって怒られないか
②水道がないところだと、水やりはどうするのか、収穫した野菜をどこで洗うのか※
③車の置き場所は近いか
④自宅はマンションなので、耕運機などの機械はどこに保管したらいいのか
⑤お手洗いが近くにあるか
⑥(私は運転が苦手なので)平日にどうやって通うか、もしくは週末ガッツリ作業できる場所か
といった感じです。本当なら、排水性はどうか、土の状態はどうか、機械が入りやすい形状か、といったところを見るべきでしょうけど、お手洗いがどうとかそんなことばかり考えてました。また、この先、親が介護状態になった場合のことを考え、実家近くの奈良で探した方がいいのかということも決断できない大きな理由でした。
もちろん、準農家として農地を借りようとすると大阪府内で探すことが前提になります。よって、大阪以外で探した時は、農地じゃなくて畑つきの古民家を見学に行きました。場所が遠くても、週末にはそちらに泊まり込んでがっつり作業をしたらいい、家の前が畑なら、水もある、お手洗いもある、無農薬でもできる、と思ってのことです。でも、週末のたびに泊まり込んで・・・というのはいつかしんどくなるだろうと思い、断念しました。
市民菜園でいつも冷やかしてくるおじさんに「農地を探してる」という話をすると「農地なんてなんぼでもあるやんか、あの辺に田んぼがたくさんあるやろ?農作業しているおじいさんに声かけてごらん、喜んで貸してくれるで」と言われました。
なるほど。でも、ちょっと空いているところで家庭菜園をするくらいなら気軽に貸してくれるのでしょうけど、1反とか借りようとするとさすがにきちんと契約を結ばないと貸してくれないんじゃないか、そもそも突然声をかけてきた農家でもない見知らぬ人に大事な農地を貸すだろうか・・・私なら貸さない、と思い、これも止めておきました。
※③の水についてはちょっと大事な点なので、次回の記事で改めて書く予定です。
4.「闇耕作」はしないと決めていた
こんな感じでウダウダ悩み、行き詰まっていた農地探し。それでも一点、決めていたことがあります。それは「闇耕作」は絶対にしないこと。
農業委員会の許可を得ずに耕作するのを「闇耕作」というようですが、私はこれだけはやらないようにしようと決めていました。
自給用の野菜作り程度なら、農家さんのお手伝いをしているという前提で農業委員会の許可を得ずに耕作している人はたくさんいます。
でも、農業として野菜を作るならやはり正式な手順を踏まないと、どこかでハシゴを外されることになるかもしれないという不安が常に付きまといますし、ゆくゆくは農地の購入を予定しているため耕作した実績はきちんと残しておきたいとも思いました。
今でも、農地を借りるなら絶対に正式な手順を踏むべきだと考えてます。
実際、正式な手順で借りた後、市役所から、講習会の案内、補助金の申請書、やさいバスの新規運行の説明会など色々な書類が郵送されてくるようになりました。また、農業委員会の許可が降りた後、その許可書を持参して農協の正組合員になる手続きもしました(まぁ今から思うと正組合員にならなくても良かったかなとも思います・・・この点も後日改めて書く予定です)。販売の登録をする際にも許可書のコピーを求められたりするとも聞いています(私はまだやってませんが・・・)。
農家じゃない人が正式な手順を踏んで農地を借りるのは簡単ではないと思いますが、大阪に「準農家」という制度があるように、各自治体でも何か方法があるんじゃないかと思いますので、役所とよく相談して正式な手順で借りることをお勧めします。
5.ついに市役所に相談に行く→撃沈
2年前の冬、市民菜園の契約満了と新規契約の時期が近づいてきたので「これじゃいかん」と思い、ついに重すぎる腰を上げて、市役所に相談に行きました。
夫に「市役所に行ってくる、市役所に相談に行ったらもう引き返されへん、覚悟はいいか」みたいなことを言って決死の覚悟で(大袈裟な・・・)市役所に行きました。
市役所では「ずいぶん前に準農家候補として登録してもらっていたのですが、まだ有効ですか?どこか農地を借りたいのですけど・・・」と相談しました。
「準農家候補として確かに記録はあってまだ有効ではある。だけど、農地の斡旋は毎年夏に希望者でツアーをして一斉に斡旋しているので、一人だけこのタイミングで農地を紹介することはできない。斡旋会が近づいたら書類を送るので、それまで待って」と言われました。決死の覚悟で行ったのに撃沈・・・スゴスゴと帰宅し、屈辱ながら市民菜園の新規契約をしました。
夏が近づき、農地斡旋の書類が送られてきましたが、コロナのためにツアーはなく、個別に案内するようなことが書いてありました。どれもピンと来ず、結局見送りました。
6.1年後、また市役所に行く(農地の購入を相談)→撃沈
1年前の冬、また市民菜園の契約満了と新規契約の季節が近づいてきました。(細かい話ですが、2カ所を1年ずらして借りて、冬越し野菜を毎年育てられるようにしていました。)
今年こそ!今年こそは、市民菜園を卒業しよう。絶対に卒業してやるんだ!
市役所に相談に行ってもまた夏の斡旋会まで待ってくれと言われるだけだろうから、自力で探そうと考え、自宅周辺の農地を真剣に探し始めました。
親の介護のことはなるようになれで今は考えないことにする、とにかく自宅周辺で探そう、水のこと、トイレのこと、どうにでもなるさ、という感じで、自宅周辺の農地を見て回ったり、農地ナビで探してみたり、ジモティや不動産会社のサイトを調べてみたりしました。(ちなみに農地ナビはイマイチ使い方が分かりませんでした・・・。)
そうすると自転車で通える距離のところに「売農地」を発見!600㎡ほどの日当たり良好の農地です。不動産屋さんに連絡を取ると、相続したけれど農家じゃない仕事に就いているので早々に売りたいということです。
見学させてもらい、とても気に入ったので、も〜う勢い止まらず、「この農地を買いたい、買うにはどうしたらいいか」と市役所に相談に行きました。売りたい人と買いたい人がいるのに邪魔するのは誰やと言わんばかりの勢いで。今から思うとなんと無謀な、と思いますが・・・。
そうすると、農地を購入しようとすると最低2反(うちの自治体の場合)の耕作をしていることが必要、これは準農家だからとかじゃなく、農家でも同じで絶対の条件とのこと。
さらに私は準農家としてもまだ耕作した実績がないので、購入したければまずは農地を借りて、3年間きちんと耕作をやり遂げることが条件だと言われました。
「山林ならこういう条件はないからすぐにでも買えるよ、山林にしたら?最近流行ってるし。」と言われましたが、私、そんなにワイルドに見えますか?ってとこです。
買うにはハードルがかなり高いということが分かり、さすがにシュンとしてたので見かねたのか、「今だったらこことかここの農地を斡旋できるけど」ということで、本来なら夏の斡旋会まで待たないと行けなかっただろうけれど、いくつかの農地を紹介してもらえました。コロナで夏の斡旋会がどうなるかわからないというのもあったと思います。とりあえず地図などの書類をもらって、帰宅しました。
7.夫と一緒に市役所へ→運命の土地との出会い
紹介してもらった農地を見に行き、いろいろ質問があったので再度市役所に行きました。この日は夫は誕生日で、免許の更新のために仕事は休暇を取っていたため、一緒に行きました。
市役所では新たに別の農地も紹介してもらうことができ、市役所から帰る車でそのまま紹介してもらった農地を見て周り「ここがいい」と決め、なんだかんだでその日のうちに地主さんと電話で連絡を取るまでになりました。
ここが今借りている農地です。一旦動きだすとトントンと話が進んでいき、不動産はご縁だと言いますが、本当にそんな感じがしました。
8.地主さんが出した条件をクリア!
この農地、この時点では別途借主がいました。おそらくその人も準農家だと思われます。
怪我されたようで途中で来れなくなり、耕作放棄地状態になっていて、地主さんとしては契約途中だけれども途中で解除して、新しい人に貸したいと考えていたようです。
私が訪れた時は、誰かに頼んだのか、全面に耕運機だけは掛けられた状態になっていましたが、あぜや法面がセイタカアワダチソウやクズの蔦などがめちゃくちゃに茂っている状態でした。
このあぜや法面を綺麗にしてくれたら貸してもいい、というのが初めて電話で会話した地主さんから言われた条件です。スピーカーにしていたので電話でのやりとりを夫も聞いており、目でOKという合図をしたので、やります、と即答しました。
夫は翌日も休日で会社が休みだったので、朝イチでコーナンに刈払機を買いに行き、説明書を読んで組み立てた後、「今から作業します」と地主さんに電話しました。夫は刈払機を掛けていき、私は「ちょっとずつ燃やしていくんやで」という隣の農地のおじいちゃんからのアドバイスを受けて、集めて燃やすという作業をしていきました。
夕方になり、少し燃やすのが残ってしまいましたが、地主さんが見にきて、「これなら大丈夫ね、貸しましょう」と言ってくださいました。念願の農地を借りられることになった瞬間でした。
後で聞いた話ですが、その前に貸していた人も途中で来なくなったらしく、今度こそは大丈夫なのか見極めてから貸したいと考えたらしいです。ごもっともです。
ちなみに、この日、夫が刈払機を使うのは人生で2度目でした。1度目は、研修先の農家さんのところで使わせてもらった時。さすがに初めてだったら尻込みしたけれど1度でも使ったことがあったので「できます!」と言えたとのこと。なんでも経験しておくもんやな、と夫婦でしみじみと語りました。
というか、就農したいのは私だったのに、こんな重労働を一緒にしてくれて、結婚してよかったなあと(初めて)思った日でもありました。
いつか書こうと思っていた、農地を借りるまでの詳細をようやく書きました。借りてからもうすぐ1年になります。実際に耕作してみてどうだったか、また、新しい農地の話を次回は書きたいと思います。
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