【移転します】農地、買いました!

ブログにて、「当農園は今、大きな転換期にあります、12月頃に報告します」と以前書いていましたが、12月になりましたので報告します。

これまでメインで使っていた約860㎡の畑ですが、2024年4月末に3年間の契約満期を迎えます。これをもってこの畑は地主さんへ返却することとしました。

そして別の新しい畑へ移転します。この新しい畑というのは、この度、購入した畑です。前々から「小さくてもいいからいつか農地を購入したい」とブログに書いてきましたが、遂に実現しました。

まずは、購入した畑の概要です

資金決済や登記を済ませ、2023年11月末に引き渡しとなり、12月から使えるようになりました。堺市南区ではなく堺市西区ですので、今までの畑よりも少し遠くなりますが、許容範囲です。

961㎡なので、約1反。これまで借りていたところは大きな法面があってその雑草管理に悩まされていましたが、こちらの農地は法面がないのが嬉しいです。法面がないということは、耕運機をかけている時に方向転換しきれずに耕運機もろとも法面から転落してしまうというような危険もありません(夫、実績あり)。ほぼきれいな長方形なので、畝立てなどもしやすそう。

市街化調整区域で上下水道はありませんが、ため池付きの大きな水利組合があり、会長さんのご自宅へ挨拶に伺って加入手続きも済ませましたので、夏場は水路の水が使えます。

ただ、長年水田だったので、これを畑に転換するにはなかなか大変かなという予感はしています。あと、車を停めるところが畑の中になく、みなさん譲り合って空いたスペースに停めているというのが少し悩ましいところです。

移転を考えることになったきっかけ

有機栽培の畑を移転するというのはなかなか大変で、できれば同じ畑をずっと使いたいものですが、どうして移転しようと考えたのか。

約1年前になりますが、昨年(2022年)の年末、メインで使っている畑の地主さんから「もしかしたら返してもらうかもしれない」という電話がありました。地主さん側の事情によるものですが、寝耳に水でした。

有機栽培は土づくりに何年もかかりますし、私はできるだけ固定種を育てて種とりをし、借りてまだ何年も経ってないとはいえ、その畑に馴染んだ種にするようにしてきたので、この畑を返すということはこれまでやってきたことを一旦リセットするような感覚です。ですのでこの年末の電話は本当にショックでした。

でも電話では「もしかしたら返してもらうかも」というはっきりしない感じだったので、実際には返さなくても大丈夫だろう、心配事の9割は起こらないという本もあったよね、と楽観的に考える一方で、いやでも本当に返さないといけなくなったらどうしよう・・・などと楽観と悲観が入り混じって頭がぐちゃぐちゃの状態で、新しい年を迎えました。

お正月もうわの空でしたが、少しずつ冷静に考えることができるようになり、借りているということはいつか返さないといけないし、これまでこの畑を借りていた人も短期間でコロコロ変わっていることや会話の内容を振り返ると、今回は大丈夫でも今後突然返して欲しいと言われるリスクも結構高いかなと考えるようになりました。

仮に突然返してと言われたとしても、契約上は3年間の契約なので、途中で解約する場合は貸主借主双方の合意が必要とはなっており、絶対に返さないといけないというものではないようですが、実際には契約途中でも地主さんから返して欲しいと言われたら借主としては応じざるを得ないと思います。そういう状況になった場合に私は耐えられるだろうか・・・。

考え尽くしたら答えは出ました。

気持ちを切り替えて、7草がゆを食べながら「今の畑は3年の満期をもって返す前提で動こう、新しい畑を探そう!」と決心し、夫にもそのように伝えました。

「借りる」か「買う」か

当時、新規就農2年目。新しい畑を探すとしても・・・借りるか買うか、です。

住居の「分譲か賃貸か」という論争はよく耳にしますが、農地に関しては、先祖から受け継いだ田畑をすでに持っているという人はさておき、「借りる」という人が圧倒的に多いんじゃないかと思います。というのは、借りる場合の地代がかなり安い(もしくは無料)からです。私も今回返す畑は無料で借りていました。「買う」という人は、空き家バンク等で畑付きの古民家を買うケースくらいでしょうか。

ただでさえ新規就農直後は機械を買ったりなんやかんや出費が嵩みます。ただみたいな値段で借りられる農地がたくさんあるのに、土地の購入にお金をかけるのは、限られた資金の使い方としてナンセンスですよね。

ただ、やはり「何十年も耕作してきた農地を地主さんに返すことになった、ショックです」という話は時々耳にします。理由としては、息子が畑をやることになったから等も聞きますが、相続が発生して相続した人が売却を希望しているというのがよく聞くパターンです。

たくさんの畑を借りていてそのうちの一つを返すということならばそこまでダメージはないかもしれませんが、うちみたいに2、3箇所借りている程度でそのうちの一つを急に返さないといけなくなるというのは、なかなかしんどいことです。「借りる」だと、このリスクがずっとつきまといます。

「借りる」人が圧倒的に多い中、もう今回のような思いはしたくないということもあり、私としては「買いたい」という方向に気持ちが向いていました。

しかし問題は、農業委員会の許可が降りるかどうかです。

以前、農業委員会に「農地を借りて少なくとも3年耕作した実績がないと3条許可は降りない」と聞いていましたので、新規就農2年目では買いたいと思っても許可は降りないだろう、という考えがまずありました。2000平米の要件もあるよね、まずは新たな畑を借りて3年の実績と2000平米の要件をクリアして・・・と、なかなかの大変さに考えるだけで暗澹たる気持ちになり、先が見えない状況に眠れない日が続きました。

ちなみに、借りる場合は市役所が斡旋してくれますが、買う場合は不動産業の民業圧迫になるために市役所は斡旋してくれないので自力で探さないといけません。とりあえず、買う場合はどんな畑があるだろうかと、「売」という看板がかけられている通りすがりの農地を見たり、不動産会社のサイトを見たりしました。

そして2月。

ハッキリさせようと、農業委員会に行って「私は丸3年経ったら農地を購入できるようになりますよね?」と確認しに行ったところ、「いやもう今の時点で許可は降りると思いますよ」と教えてもらったこと、また、法改正で2000m2の要件も無くなったことを知ったというのは、以前のブログで書いた通りです。

一気に購入モードになりました。

一旦、落ち着こう

とはいえ、一旦落ち着こう、と何度も自分に言い聞かせました。

不動産を購入するというのは、その不動産をきちんと管理する義務も発生するということ。農地だと尚更です。

また、これも以前のブログでも書きましたが農業スクールの先生に、「買うのは慎重になった方がいい、撤退できなくなりますよ」とアドバイスされたということもあり、買いたいという気持ちに意識的にブレーキをかけました。

周囲の農家さんとうまくやっていけなかったら?買ったところが洪水で水没したら?堺から引越ししないといけなくなったら?親の介護が必要になったら?夫が病気になったら?自分が病気になったら?歳を取ったら?私が死んだ後はどうする?

不動産会社のサイトに掲載されている農地情報を見ていると、何年も前から掲載されたままの農地が多いです。ということは、売りたいと思ってもそう簡単には売れないということ。

また、農業委員会の方にも「土の状態はよく見た方がいいですよ、土壌改良にすごくお金がかかるかもしれませんからね」というアドバイスももらいました。ハズレを引いてしまう可能性もあるのか・・・

もちろん、予算の制約もあります。でも農地の売値は地主さんが決めるので、本当にまちまちで相場がどれくらいなのかもよくわかりません。ただ、傾向としては、世間の不動産相場は上昇しているのに対し、農地については下落トレンドだと聞きました。ということは今買ってもまだ下がる可能性が高いということ。

そういえば、新規就農する前に「買いたい」と思っていた農地※、まだ売れてないようですが、今から思うと相場よりずいぶん高い感じがしたのでここは候補から外しました。

※このブログで書いていた農地です↓
【農地探し(前編)】農地を借りるまでの経緯

・・・色々考えると、リスクだらけで尻込みします。

でも、今後、時代は変わって、食料を自給することの大切さから農地の価値が見直される日が来るかもしれないし、貸すのも手軽にできるようになるかもしれない、市街化調整区域が外れる可能性もあるし、歳をとってしんどくなる前になんらかの認証を取ったり無肥料で育つような土にしておいたら丸ごと事業承継で引き受けてくれる人もいるかもしれない。

ずっと前に読んだ堀古英司さんの「リスクを取らないリスク」という本を思い出しました。怖いからと尻込みして何もしないと余計に後で後悔するかもしれない、やっぱり買う方向で進めよう、ただし、これだという農地に出会わなければ無理に買うのはやめよう、と自分の直感と運を信じて農地を探しました。

そして意中の農地に出会う

5月下旬になり、これだという農地を不動産会社のサイトで見つけました。

この農地は、「相続したけれども別の仕事を持っていて自宅から遠いから売却を希望されている」という農地です。しかし、そこは田んぼとして別の方に貸出中で、契約の満期はそこからまだ1年残っていました。こういう場合はどうなるのか農業委員会に確認すると、契約がまだ残っている状態ではそもそも農地売買の許可の申請をすることはできないとのこと。

そこで、地主さんが借主さんに連絡を取り、稲刈りが終わった後は使わないから稲刈り後に中途解約することを承知いただけたとのことでした。

よって、6月中に手付金を払って売買契約書を交わし、稲刈り後の11月の農業委員会にて3条許可を取りに行き、11月中に資金決済と登記、11月末に引き渡しという段取りで進めることになりました。

ただ、私はまだ「準農家」で、新規就農後3年経っていません。3年の実績が絶対条件ではないとはいえ、一応3年がワンサイクルということで本当に許可が降りるのか微妙なところでした。もし許可が降りなければ、 自分自身が残念ということももちろんありますが、関係者の皆さんにとんでもない迷惑をかけてしまうことになります。売買契約書を交わす前に、農業委員会に何度も「許可、降りると思っていいですよね・・・?」と念押しの確認をしました。農業委員会の方には親身に相談に乗っていただいて、本当に感謝感謝です(泣)。

とはいえ、11月に正式に許可が降りるまで、ずっとずーっと不安な毎日でした。とにかく畑に行って、借りている畑をきれいにして不安な気持ちを抑える日々。かといって病気して寝込んでしまうとあっという間に草ボーボーになってしまうので、病気しないようにしっかり寝なければと思いながら、なんだか落ち着かなくて寝れない日々。

返すことに決めた畑はいつ返して欲しいと言われるか分からないということもあり、夏野菜以降の新たな作付けはストップしていましたが、11月26日にマルシェの予定が入っていたので、売り物をそれなりに準備しなければなりません。もう一つの小さい方の畑を隅から隅まで使って野菜を育て、虫食いなどのロスが極力出ないようにすごく監視して何とかこなしました。

無事に許可が降りた時は、はぁぁぁぁ・・・と天井を見上げて大きなため息が出て、数ヶ月ぶりにホッとしました。直前に「もし許可が降りなかったらしばらく寝込むと思う」と母に話していましたが、

後悔しないとは言い切れない

購入したことを後悔することはない、と言い切る自信はありません。でも、そうなったら仕方ない、その時にどうするか考えようと思います。

これがもし、借金して購入ということならばかなり慎重になっていましたが、手持ちのお金で十分買える値段であることを大前提に探していたので、もしも「失敗だった」としても痛手はありますが、なんとかなります。

今はとにかく、またいろいろな野菜が育てられると思うと嬉しくて仕方ないです。インスタの方に少しUPしていますが、すでに土づくりを始めていて、早春の作付けからスタートできればと考えています。

有機栽培の畑の移転は大変ですし、今回返すことになった畑は周りの方にすごく恵まれていたので、「返してもらうかも」という地主さんからの話がなかったら自ら移転しようとは全く考えなかったと思います。そう考えると、これも人生の流れだったのかなと思います。

人生どうなるか分からない

先日、大阪のオフィス街の近くに用事があったので、ついでに御堂筋のイルミネーションを見てきました。

かつて私は、この御堂筋沿いの会社に勤務していました。

一番大変だった年は、日付が変わってから会社を出るということもちょくちょくありました。深夜まで働いて心身ともにクタクタになって「イルミネーションを見て和もうかな」と会社をでて、「あ、消えてる」とイルミネーションすら消される時間まで働いたことを知り、何の感情もわかずに、むくんだ足をパンプスに食い込ませながら家まで歩いたことを思い出しました。

あの頃、将来、堺で農家になっているなんて想像もしなかった。今は今で大変ですが、あの頃と比べると今は少しは自分の人生を歩けているんじゃないかと思います。人生どうなるか分からないものですね。

今年は丸1年、畑の移転に始まり、畑の移転で終わりました。といってもまだ移転は完了していないので、来年は新しい畑をしっかり稼働させることと、返す方の畑はきれいに整えて返すということがマスト事項です。

新しい畑(約1反)と、お借りしている水道付きの畑(約半反)の約1.5反の畑を使って、来年も色々やりたいことを考えています。ブログ執筆が追いついていないのですが、来年もどうぞお付き合いくださいませ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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