【前編】食糧危機に備えて作付けを考えることに

「食糧危機に備えなさい」と、最近よく耳にします。どこでか、ネット上でです。

YouTubeやSNSでは、個人の嗜好を反映したものが"オススメ”に表示されるので、同じような内容のものがオススメで表示され、どうしても考えが偏りがちになってしまうと聞いたことがあります(これを「フィルターバブル」というそうです)。私は以前から、世界人口の増加スピードや環境破壊を踏まえると、こんな飽食の時代は近い将来に終わるだろうと考えていて、家庭菜園や農業を始めたのも食糧危機に備えたいからだとこのブログにも書いてきました。だから、食糧危機に関することが「オススメ」に表示されやすいということはあると思います。

大食い・デカ盛りブームの今、人によっては、“オススメ”に表示されるのは大食いの動画ばかりだという人もいるようです(夫が大食いの動画をよく見てます・・・)。食糧危機?心配しすぎやで、と笑われてしまいそうです。

でも、冷静に考えて、世界各国でのかんばつ等の異常気象、紛争、自国優先で輸出抑制・・・といったことは事実であり、私自身は食糧危機はよその国の話ではないと考えています。食糧危機だけでなく、エネルギー危機も同時に来そうなのがまた怖いです。

来るのか来ないのかどっちなんだいっ!(きんに君)・・・などと冗談を言って笑っていられる間はいいですが、マスクの時もあっという間にお店から消えましたし、念のために食糧危機が近づいているという前提で、自分の畑での作付けを考えるようにしようと、最近考えるようになりました。農地、借りることができてよかったなぁとつくづく思います。

私は就農2年目、約1.5反を耕作しています。今日は私が考えている対策について書きたいと思います。

<目次>

(前編)

  1. 「無肥料」で育てられる準備をしておく
    • マメを多く育てる
    • 緑肥を使う練習をする
    • 防虫ネットを買っておく
  2. メインの野菜は固定種を取り入れる
  3. 同じ野菜でも性質の異なる品種を同時に育てる
  4. イモ(自家増殖可能な品種)を育てる
    • ジャガイモの場合
    • サツマイモの場合
    • 家庭菜園ならOK

(後編)※予定

  • 主食を確保する
  • 地産地消での売り先を確保する
  • 保存食を作る
  • 小さい家庭菜園のススメ

1.「無肥料」で育てられる準備をしておく

私は、化学肥料、農薬、動物性堆肥は使っていませんが、米ヌカ、油粕、魚カス、液肥(必要な時のみ。有機ジャス適合のもの)は使っています。

この冬にこれらを使ってぼかし肥を仕込んだので肥料は1年くらいは持ちそうですが、化学肥料や農薬が品薄になることで、油カスなどの有機質資材の需要が増え、次の冬にぼかし肥を仕込む頃に材料が手に入るだろうかと懸念しています。実際、近くのコーナンではすでに油カスの値段が値上がりしていました。米ヌカも、近くのコイン精米所でもらっていますが、化学肥料の代わりに使う人が増えてくると、争奪戦になるか、もらえなくなりそうな予感がします。

日持ちする液肥などの資材は早めに買っておこうと思いますが、そもそも本来の自然農は「無肥料」。土がしっかりできていれば外部から肥料成分をほとんど持ち込まないで育てることができるようですが、うちの畑はまだとても無肥料では育ちません。しかし、手に入らなければ嫌でも「無肥料」で育てないといけないので、今から無肥料で育てる準備や練習をしておかないとと考えています。

具体的には次のとおりです。

マメを多く育てる

丹波黒大豆は元々育てるつもりでしたが、追加で、普通の大豆やうずら豆、インゲンなどを多く育てようと思います。

マメ科はご存知の通り、肥料分としては窒素を補ってくれますし、食料としては保存も効く、タンパク源になる、と一石三鳥も四鳥にもなりますが、普通の大豆って、何気に育てるの初めてでして・・・。栽培の難しさをまずは知っておきたいのと、どれくらい肥料の代替になるのか知っておきたいと思います。

昨年、就農したばかりでぼかし肥もありませんでしたが、ナスビのコンパニオンプランツとしてピーナッツを育てたら、肥料喰いと言われるナスビもよく育ちました。米ヌカ油カスも少量なるも定期的に与えていたので、純粋なピーナッツの効果は分かりませんが、ピーナッツが発芽しなかった箇所はナスの育ちもイマイチだったこともあり、手応えはありそうでした。耕作放棄地状態だったので、過去の肥料分が残っていたということも考えにくいです。

大豆は6月以降の種まきになるので、ジャガイモの後に種まき予定です。

ただ、豆は保存できると言えど、いざ食べようとすると何時間も煮込まないといけないのが難点です。光熱費もこれからますます値上がりしそうなので、これを機に圧力鍋を購入しようか迷い中です。アズキだとそんなに長時間煮込む必要はないのですが、昨年収穫後に虫が発生してしまって解決方法が分からないので、今年はアズキは育てないつもりです。

緑肥を使う練習をする

緑肥を上手に使っておられる人を本当に尊敬します。私は、次の理由(言い訳)で緑肥をまだ使いこなせていません。

・たくさんありすぎてどれを使ったらいいか分からない
・種まきの時期がよく分からない
・お値段もそこそこする
・種子消毒されているものがほとんどで躊躇してしまう
・育てた後は大きなトラクターで漉き込むイメージだが、トラクター持ってないし・・・

ぼかし肥の材料調達に困る事態も想定し、ここは重い腰を上げて、緑肥をうまく使えるように少しずつ練習しようと思います。

2022年5月号の「現代農業」には、緑肥を上手に使うと肥料代をかなり減らせるということが書かれており、種まきの時期や何に効くかなどの一覧表も搭載されていてとても分かりやすいです。

とりあえず、カネコ種苗さんの「セスバニア ロストアラータ」を購入しました。以前のブログにも書きましたが、うちの畑は過去は田んぼで、大雨の後にすぐぬかるみができてしまうため、硬盤破壊をしたいと考えて購入しました。上の現代農業P52によると、このセスバニアは排水、透水性の改善能力はピカイチなのだそう。P56~57には気になるところだけピンポイントで使った事例が紹介されていました。マメ科なので窒素固定もしてくれるということです。

できるだけ種子消毒なしのタネを使いたいところですが、このセスバニアは種子消毒がされています。ただ、種子消毒がされていない緑肥となるとかなり選択肢が狭まってしまうため、ここはとにかく緑肥を使い、使いこなせる練習をしておくことを優先したいと思います。

硬盤破壊してくれるほどの強い直根、草丈も3メートル程になるらしいと説明を読み、ややビビっています。抜けなくなったらどうしよう、と。トラクター持ってないんですが、大丈夫かな・・・。

種まきは6〜7月なので、もうしばらくビビりとの戦いが続きます。

防虫ネットを買っておく

この冬、キャベツ、カリフラワーを育てていましたが、防虫ネットをしたところ、しなかったところの違いは明らかでした。

防虫ネットをしなかったところは、冬、エサに困った鳥に綺麗に食べられ、春、復活した葉っぱは青虫でボロボロ。一方、防虫ネットをしたところは下のようにきちんと収穫できました。富士早生というキャベツです。

防虫ネットがあれば虫がつきやすい野菜でも農薬なしでいける、そう自信がつきました。食糧難になった場合、育てた野菜を鳥や虫に食べられてしまうのはとても勿体無いので、防虫ネットも買っておこうと思います。こちら↓は実際に使っている防虫ネットで、5メートルで1100円くらい。幅はもうちょっと狭くてもいいかもと思ってます。

10メートル以上のは、ホームセンター等で巻物で売られていますが、思い切ってそちらを買うか迷い中・・・

2.メインの野菜は固定種を取り入れる

食糧危機に備えるには、固定種の種を使っておくというのは基本かと思います。

ですが、私は昨年ほぼ固定種で育てたところ、正直育てにくいのもあったので、今年の夏野菜はトマト、ズッキーニ、カボチャなどでF1を使っています。昨年は固定種のズッキーニに相当難儀しましたが、F1の今年はすんなり収穫までたどり着き、やはり品種改良ってすごい、文明ってすごい、と思わざるを得ませんでした。

ただ、マスクが手に入らない、家を建てるための木が手に入らない、家電が手に入らない、肥料が品薄・・・ということが現実に起こっているので、タネが手に入らないという状況になる可能性もゼロではないと改めて思い始めています。よって、メインの野菜については、全てをF1にするのではなくて、固定種のタネも併せて取り入れておかないといけないなと思っています

例えば、ズッキーニさんには申し訳ないですが、ズッキーニは正直いうと食卓になくても問題ないので、全てF1でもOK、でも、ニンジンは栄養価の面でも食卓に必ず欲しいので、仮にF1を取り入れたとしても固定種も併せて使っておく、という感じです。

さらに、まだ2年目なので実体験で語れないのですが、肥料や農薬に頼らない自然農で育てようとすると、タネ取りを繰り返して何年もかけてその土地に合った強い野菜にしていくのが大事だと聞いています。

下の写真は、左は日本ほうれん草、右はフルーツスナップエンドウです。タネ取りは手間ですが、大事に育てた野菜から採れたタネ、私色に染まりつつあるタネだと思うと、タネ取りをする時間は何だか豊かな時間だなと感じます。

ところで、アブラナ科は交雑しやすいのでタネ取りが難しいと聞いています。バカ丸出しやなと思われると恥ずかしいのですが、「自分で採種したキャベツの種を蒔いたら水菜ができた」とかはさすがにないですよね??この辺がよく分からないので、今年の春に咲いた菜の花からタネ取りは全くしなかったのですが・・・「ちょっと思ってたのと違うキャベツができた」くらいなら許容範囲なので、アブラナ科もタネ取りした方がいいかな・・・

3.同じ野菜でも性質の異なる品種を同時に育てる

異常気象が頻発する昨今。3月に夏のように暑い日があったかと思えば、5月中旬でも夏野菜が枯れてしまわないか心配になるほどの寒さがあったりします。

今年育てた玉ねぎは、超極早生「春陽黄」は小さいのがようやく収穫できた程度で、早い話、失敗でした。

しかし、中晩生の「泉州中高黄」は、なんとか収穫できそうです。

また、今育てているジャガイモ5種類のうち、先日の猛烈な雨で水が溜まってしまったせいか「インカのめざめ」が枯れてしまいそうです。「インカのめざめ」は栽培が難しいと聞いていたのでやはりといった感じですが、他のジャガイモが問題ないのでショックからも立ち直れます。

栽培技術がまだまだ未熟な私は、極端な気候に対応しきれないので、同じ野菜の性質の異なるものを育てて全滅を防ぐというのも大事だなと思いました。

4.イモ(自家増殖可能な品種)を育てる

今年は、保存ができて、お腹がふくれるジャガイモ、さつまいもを多めに植えるようにしました。

昨年の秋に収穫したサツマイモは、うちのマンションの一室でスーパーのビニール袋に入れたものを段ボールに入れて保管というかなり適当な保管方法で置いてますが、少し芽が出てきてはいるものの、5月中旬の現時点でも問題なく保存できており、美味しく食べています。

特にさつまいもは肥料も要らないので、食糧難にはもってこい、ですね。

問題は、自家増殖できるかどうか、です。自家増殖できなければ、来年また種イモを買い直さないといけませんが、食糧難になるとおそらく種イモも入手困難になることが予想されます。

ジャガイモの場合

まずは、登録品種かどうかをチェック↓

○農水省 品種登録ホームページ より 品種登録データ検索
http://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM110.aspx?MOSS=1

このデータ検索の一番上のセルに、ジャガイモの場合は"バレイショ”と入力して「検索」ボタンを押すと、ジャガイモで品種登録されている品種がズラっと表示されます。

私が大好物でメインで育てているキタアカリで見てみると「育成権者の消滅日」に日付が記載されていることが分かりました。よって、キタアカリは今では登録品種ではなく、一般品種になっているので、自家増殖も問題なしのようです。他に育てているタワラヨーデルやグラウンドペチカも育成権者が消滅しているようで一安心です。ジャガイモは、過去に作出された品種がかなり優秀だったということなのでしょうか、現在販売されている王道の品種の多くがすでに一般品種になっているので嬉しいです。

一方、よく目にする種イモでは、シャドークイーンやノーザンルビーは2022年現在も有効中の登録品種となっていますので、注意が必要ですね。

また、ジャガイモは自家増殖を繰り返しているとウィルス病にかかりやすくなるとよく聞きます。ジャガイモは意外に繊細で病気にかかると一気に全滅してしまうこともあると聞いているので怖いです。健全な土づくりをしていると大丈夫とも聞きますが、どうなんだろう。これは自分で経験していないのでなんとも分からないですが・・・

サツマイモの場合

サツマイモは今年は、パープルスイートロードとシルクスイートを育てる予定で、今年はツルとり用の苗を購入し、現在育苗しています。

購入した時に登録品種だと記載されていたので、もう登録品種と分かっているのですが、一応見てみます。上記の検索ページで"カンショ”と入力し、「検索」ボタンを押します。

やはり、パープルスイートロードは現在も有効中の登録品種とわかりましたが、シルクスイートが何度探しても見当たりません。調べてみると、シルクスイートは登録名が「HE306」だそうで、これで調べると該当のものがあり、やはり現在も有効中の登録品種でした。これは・・・分かりにくくて見落としそうです(泣)

ここで、昨年執筆した下のブログですが・・・

○2021年6月11日付
【就農・有機農業】種子消毒や種苗法について調べるとカオスになった

このブログ内で、「サツマイモは、登録品種であっても、自家増殖を禁止されている作物のリストに載っていないから自家増殖しても大丈夫そうだ」と書きました。実際、昨年パープルスイートロードの苗を購入した際に、購入したネットショップに質問させていただいて、自家増殖可能とお返事をいただいています。

しかしながら、つい最近、令和4年4月1日付で種苗法が改定されており、サツマイモも自家増殖禁止となったようです

こちらのパンフレットにズバリ、登録品種のさつまいもは自家増殖禁止と明確に書かれています↓

○農水省 品種登録ホームページより
登録品種を農業者が増殖する際の許諾について(パンフレット)
農業者向け(PDF : 1,720KB)

恥ずかしながら、全然知らなかったです・・・2021年6月11日のブログは、加筆訂正しておきます。

今年育てているパープルスイートロードは、ツル取り用の苗を新たに購入しているのでとりあえずセーフです。ですが、本気で農業新聞を購読した方がいいかもと思えてきました。

自家増殖禁止となったので、今年育てている2品種がどちらも登録品種のため、来年、新たに苗が手に入らなければ育てられないことになります。一般品種のさつまいもを今年追加で育てようか・・・それか来年、スーパーで一般品種のサツマイモを買って苗を作るか、いや、食糧難ならスーパーのサツマイモも手に入るかどうか・・・ちょっと考えます(泣)

家庭菜園ならOK

次のパンフレットによると、登録品種であっても家庭菜園で自分で消費する目的ならば、自家増殖もOKとされています。

○農水省 品種登録ホームページより
種苗法改正のポイント
家庭菜園向け(PDF : 1,995KB)

来年、新たに苗が手に入らなければ、あくまで家庭菜園で自分で消費する分ならば植えても大丈夫そうなので、いざとなったらそうしようと思います。


長くなってしまいました。前後編にして続きは次回書きます。続きは、ざっと次のような内容を予定しています。

・主食を確保する
・地産地消での売り先を確保する
・保存食を作る
・小さい家庭菜園のススメ

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

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