畑に水道がなくても大丈夫か?→新しい農地を借りました

農地を借りて1年になります。この農地には、これまでのブログでも書いてきた通り、水道がついていません。

農地探しをしていた時、「農地って水道がついてないところがほとんどだけれど、水やりや収穫した野菜を洗うのって皆さんどうしてるんだろう、よくバスタブが置いてあるのは見かけるけど・・・」と疑問に思っていました。

できれば水道のある農地を借りられたらなぁと思いながら農地探しをしていましたが、あるセミナーで出会った人が、「水道はなくても何とかなるよ、私は野菜への水やりはしたことないし、出荷する時も洗ってなくて土が付いたままだけど、私のお客さんは私の野菜を好んで買ってくれているので何も言われたことない」と話してくれました。

この話を聞いて「水道がない畑でも何とかなる」と割り切ることができ、今使っている農地をお借りすることにしました。

さて、この水道のない農地を借りて1年。今はどう考えているかを今日は書きたいと思います。

結論を先に言うと、自給自足じゃなく売り物を作る農業をするならば、圃場の中もしくは圃場の近くに、水道(または飲めるレベルの清流や井戸水)は必要、ということに行き着きました。

1.水道がない場合、野菜への水やりはどうするか?

雨水や水路の水で何とかなるのですが・・・

野菜への水やりは、多くの人がされているように、バスタブ等に雨水を溜めて必要な時はそれを使う、普段は雨任せで毎日の水やりしないということで、とりあえずは「何とか」なりました。種まきの時も、しっかり鎮圧したり、天気予報をしっかりチェックして雨予報の前に種まきすれば、水やりしなくても発芽してくれます。

私が農地を借りた時、市役所の人に「水ってどうしたらいいんでしょう・・・?」と相談したら、道を挟んで川なのでポンプで組み上げるという方法もあるよ、と教えてもらいましたが、さすがにそこまではできませんでした。道には車も通りますし。

これまでのブログとも重複しますが、私が借りている農地は元田んぼなので、田植えから収穫までの期間は水路に豊富に水が流れており、水を引き込むことができます。ただ、この水路の水は生活排水が混ざっていると思われるため、日照りが続いて本当に必要な時のみしか使わないようにしました。雨水を貯めるバスタブを置くのはちょっとためらいがあったので、大きなゴミバケツを設置して、その水を使ったりもしました。

(畑にバスタブを置くのにためらいがあるというのは、好みの問題なんですけど、景観的にあまり好きじゃないという理由です。ゴミバケツも一緒やん、って言われればそれはその通り何ですけど。)

こんな感じで、水道がなくてもとりあえずは乗り切ることが出来ました。昨年の夏は割と雨が多かったということにも救われたかもしれません。

本当はしっかりと水を与えたい

しかし、先般受講した新規就農者向けの講習会で「上手な農家さんほどしっかり水やりされてます。何なら雨の日でも水やりしてますね。水をちょっとしか与えないのが良いと言っている人は農業のことを何も知らない素人です」と聞きました。

確かに、水がなくても「何とかなる」んですけど1年やってみて思うのは、品質の良いものを確実に育てるためには、自然の雨に任せるのではなく、しっかりと灌水するのが必要なのかなと思うようになりました。

これを読んでくださっている方の中には「うちは天然の雨水だけで上手に育ってる、あなたが下手なだけでは?水道がないからなんて言い訳してるだけでしょ?」とおっしゃる方もあるかもしれません。それはその通りで、まだ上手に野菜を育ててますとはとても言えないし、水のせいにしたい気持ちがあるのも正直なところなので、甘んじてご指摘はお受けします。

また、「水道がないならば、水を多く必要としないものに絞って育てたら?」というお声もあるかもしれません。例えば、トマトや芋類だけにするとか・・・。でもやっぱりサトイモやナスビ、にんじんやきゅうりも育てたいのです・・・。

ないものねだりしてもしょうがないけれど、正直、いつでも使えるキレイな水があったらなぁと思うことがあります。

ちなみに、育苗をするには絶対に水が必要なので、基本的には自宅マンションで育苗し、定植直前に畑に持って行き、定植までは持参した水で水やりしていました。近くの農家さんは、真夏にキャベツの育苗を畑でされていましたが、(多分)毎日、軽トラで水を運んでおられました。

タイの研修先農園ではどうされていたか

以前、タイのバンコク郊外にある農園で研修させてもらったことがあります。国際的なオーガニック認証をいくつも取得されている広大なオーガニック農園です。

ここは山から直接流れてくるキレイな川が近くに流れていて、普通ならば野菜にもその川の水を使用するところですが、川の水は何が含まれているか分からないからということでこれは使わず、井戸を掘って組み上げた地下水を使っているということでした。

地下深くまで井戸を掘り、農園の一番高いところにため池を作ってそこに溜め、何枚もある畑全てに灌水用のパイプを張り巡らせ、栓を開け閉めして灌水しているということでした。一番高いところに池を作る理由は、組み上げる電力が要らないからということです。こちらがそのため池です↓

この仕組みを作る初期投資は当然ものすごい金額になり、野菜を安定的に収穫できるようになるまで大変な苦労をされたようです。私なら手っ取り早く「川の水を使おっと」となっているところですが、水だけとっても妥協は一切せず、高品質な野菜を信念を持って作っておられました。この方に「どうせなら高品質なものを作りなさい、それが自信に繋がるから」と教えてもらったことが、私の野菜作りの根幹になっています。

話が逸れました。この灌水パイプの栓を開けたり閉めたりするのは、農園の中でも熟練のスタッフが担当されていると聞きました。水やりの見極めというのはとても難しいのだそうです。

ちなみに、私が通っていた農業スクールの実習用圃場でも、地下水を使っておられました。地下水をポンプで組み上げて雨水タンクにため、ジョウロで水やりするというスタイルです。

やはり、水はあった方がいいな・・・。農業スクールで、日本ではどこを掘っても割と地下水が出ますと教わりましたが、さすがに今の農地はそこまでするほど広くないし、借りたばかりの農地で「井戸掘っていいですか」なんてとても言い出せません。ないものねだりしてもしょうがないので、工夫で乗り切ろう、と思うようにしていました。

2.冬野菜で「やっぱり水道いる!」と認識

夏野菜を育てているときは思わなかったのですが、冬になってニンジン、ダイコン、カブラなどの根菜を収穫し始めると「やっぱり水道いるわ」と思いました。野菜への水やりのためじゃなくて、収穫した野菜を洗うためです。

晴れた日が続いた時に収穫すると、下の写真のように割とキレイに収穫できますが、土が湿っていると、収穫した野菜にもどうしても土が多く残ってしまいます。

うちはマンションで、出荷調整をする専用の作業場もありません。

以前、農業指導員に「出荷するときって洗わないといけないんですか?うちはマンションなので土のものを洗う場所がありません。出荷調整する作業場がない人ってどうされているんですか?」と質問したことがあります。

「洗わないといけないことはないけれど、よくみんなしているのは、水路の水で洗う、風呂場で洗う、水を持ってきて洗う、といった感じやね」と教えてもらいました。

(ただし、2021年6月の食品衛生法改正の影響で現在は取り扱いが厳しくなっているようです。先日、直売所に出荷申込に行って知りました。水路の水で洗うなんてやらないでとのこと。これについては後日記載します。)

よく聞くのは、バケツを2つ用意して、まずは大きな土を落とし→キレイな水で仕上げ洗いするというやり方です。アウトドアで手を洗う用の水タンクもホームセンターで売っているので、こういうのを使うのもいいかもしれませんが、今後がっつり出荷していくことを考えると、毎回畑に水を持ってきてというのはちょっとしんどいな・・・と思います。(下の写真は、コーナンで買った手を洗う用の水タンクです。)

「土付き」に価値を見出してくれる方もあると思いますので、洗わずに出荷するというのもありかもしれませんが、マンション住まいの主婦目線の私からすると、私は土付きの野菜はあえて買わないです・・・・。

あと、野菜だけじゃなくて、育苗用セルトレイやポットなんかも使い捨ては勿体無いので、洗いたい・・・。

どこかに土を落とせる水道がないものか、ああ、水道が欲しい・・・

そんな思いが届いたかのような奇跡がありました。

3.水道付きの畑をお借りすることが出来ました!

もう一生分の運を使ってしまったんじゃないかというような奇跡がありました。

畑で作業をしていたら、近くの農家さんが来られて、

「ここはちょっと前まで草ボウボウの荒地やったから大変やろ、管理されてなかった農地やから土もべたっとしてて野菜もまともに育たへん」

「夏の暑い時期もよう頑張って来てたな。でもここじゃ草ばっかり生えてきて大変やろ。暑い中、草刈りばかりしてるのがなんか気の毒に思ってな、よかったらうちの畑、使ってみるか?うちの畑はここまで草生えへんで。」

「あ、それとな、うちの畑、水道ついてるねん。農業用水とかじゃなくってな、上水やで」

とのこと。

ええええええー!!!こんなことある??ってくらい、夢みたいな出来事でした。

この大変ありがたいお話を頂いたのは晩秋の頃。じっくり考えてから返事して欲しいということでした。大事な農地をお借りすることになるので、私自身も飛び付かずに本当に2ヶ所の農地を管理できるのか、落ち着いて考え、夫とも話し合った上で、ぜひお言葉に甘えさせていただきたいですと返事しました。

広さは500㎡ほど。ベテラン農家さんがきっちり管理されてきた農地です。ちゃんと責任持って管理していかなければと身の引き締まる思いです。

この後もいろいろよくしていただいて、本当に感謝しかないです。しっかり頑張って恩返ししないと!と思います。

次回は、新しい農地についてご紹介します!

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