【さあ売るぞ!】畑に直売所を設置してみました

2022年10月23日

就農して2年目。

これまであまり収量がなく、「売るほどの量も採れないし、売るより自分で食べる方がいいや」という言い訳を言い続けて丸1年。

「これではいかん」と頭の片隅にいつもありましたが、ついに「いかん!これではいかーん!」と自分の中で盛り上がる瞬間が訪れ、重い腰を上げて真剣に売ることに立ち向かうことにしました。

近くの直売所で売る話はどうなった?

これまでのブログに「近くの直売所で売る予定」と書いてきましたが、ちょっと保留中です。

というのは、申し込みは済ませていていつでも売れる状態にはあるのですが、例えばジャガイモの収穫の季節には、うちのジャガイモだけじゃなく大量のジャガイモが山積みにされていて、買う人はちょっとでもいいものをと思うでしょうから、手に取ってはポイっと投げられてクシャクシャにされるのかなぁと思うと何だか気が進まず・・・

そしてその売れ残ったクシャックシャのを「売れ残ってるから引き取りに来てください」と言われて取りに行かないといけないのが悲しすぎること。

さらに、慣行栽培のも無農薬栽培のもどうしても値段が横並びになってしまうこと。「無農薬」という表記はもちろんできないですし、「栽培期間中、農薬・化学肥料不使用」というのも、できればしないでと言われてます。この辺は直売所によっても取り扱いが異なるようですが、私が売る予定だったところは割と厳格な直売所です。そうなると、慣行栽培の野菜の方が見た目がきれいなので、太刀打ちできません。

また、虫がついているなんてあり得ませんという説明を受けました。もちろん厳重にチェックをした上で販売するつもりではいましたが、JA直轄の直売所で慣行栽培が前提となっているため、無農薬というのはあまり歓迎されないんだなという印象を受けました。

そして、何気にこれが一番大きいのですが、売る一週間前までに「防除歴」を提出しないといけないこと。農薬の使用履歴を所定の用紙に記載して提出し、店側はそれを見て売って良いかどうかをチェックするということで、売る予定の一週間前までに提出用となっています(チェック担当者に回付する時間もあるので一週間かかるらしいです)。防除指針は野菜によって異なるから、野菜ごとに決められた用紙があり、間違った用紙だとダメと言われています。

うちは農薬を使わないので、農園名など諸々を書いた上で「農薬使用なし」と記載して出すだけではあるんですが、片道20分、書く時間を含めると1時間ほど・・・決して遠くないとはいえ、この時間がなかなかもったいないと思ってしまいます。っていうか「今どき紙かいっ!」と、ささやかに心の中で反発しております。

まあでもそのうち使うと思いますが、ちょっと後回しです。

何を、どこで、売ろうか?

ジャガイモの収穫の季節。売るならまずはジャガイモからかな、と考えました。

しかし、今年は玉ねぎが異様に高い。スーパーでは、普通サイズのが一玉100円で売られています。

うちの畑では、タネから3種類の玉ねぎを育てていました。超極早生の「春陽黄」、中晩生の「泉州中高黄」、赤玉ねぎの「フレッシュレッド」です。「春陽黄」はうまく育てられなかったけれど、後の2つは数はかろうじて売れるレベルに育ちました。

保存ができる品種で数もあまりないので、いつもの私なら「全部家で食べる」となっているところですが、これは・・・今こそ玉ねぎを売るべきではなかろうか?玉ねぎたっぷりのカレーを食べたいのは皆同じはずである、通常の値段設定での玉ねぎを売って喜んでもらえれば、うちの農園のことを覚えてもらえるんじゃないか?そうだ、今こそ玉ねぎを売ろう!・・・と自分の中で盛り上がり、まずは玉ねぎを売ることに決めました。

どこで売るか?私は固定種を中心に育てているので、流通に向かない野菜もあるし、物流費が高騰していて当面下がりそうにないことを考えると、やはり地産地消だろう、そうするとやはり「文字通りの直売」しかない!やると決めたら、この週末にやる!

・・・というわけで、大急ぎで準備しました。

(私の場合)「売る」には勇気が必要

えー、ここまで読んでいただいて「なんか圧がすごいな」と感じた方がいらっしゃるかもしれませんが、ズバリそうです。私にとっては「売る」というのは結構な勇気が要りまして、かなり自分を奮い立たせております。

これまで家庭菜園期間も含めると、野菜作りをしてきた期間は7年くらいでそれなりに経験も積んできましたが、「自分や家族が食べるものを作るだけ」の野菜作りと「全く知らない人の口に入るものを作って対価をもらう」というのとでは、緊張感が全く違います。

念入りにチェックはしているけれど虫がついてたらどうしよう、自分では美味しいと思っているけれど美味しくないと思われたらどうしよう・・・そんな不安が頭をよぎります。

「売る」ことに全くためらいがない人もいるので、そういう人から見ると何をウジウジしてるんやと不思議に思われると思いますが、「売る」というのは例えば、ずっとピアノをやってきたアマチュア音楽家が初めてお金をもらう演奏会にデビューするというか、ずっと政治に興味があった人が選挙に立候補するというか、とにかく、プロとしてのデビューなんだという気構えが必要な気がします。

そんな大袈裟な・・・と我ながら思う次第です。

直売の準備

さて、売るとなると、思っていた以上にいろいろ準備が必要でした。

<準備したもの>

  • ボードン袋
  • バッグシーラーとバッグシーラーテープ
  • POPを書くペン
  • popクリップ
  • popを挟む硬質クリアファイル(ダイソー)
  • pop を書く紙
  • 2キロの計り
  • お釣り用の小銭
  • 店構え?に必要なすだれやトレイなど(ほとんどダイソーで。)
  • お持ち帰り用のレジ袋
  • 記録用のメモ
  • 電卓はスマホで。

う〜ん、ボードン袋・・・NHKの『世界ふれあい街歩き』で世界のマーケットがよく紹介されていますが、だいたいの野菜がボードン袋などに入れられることなく、直にディスプレイされていて、それがとてもキレイだなといつも思います。地産地消で量り売りのファーマーズマーケットならではなのでしょうか。

私も家のプラスチックごみのほとんどがパッケージのゴミだということもあって、野菜のパッケージごみは何とかならないものかと前から思っており、できれば袋に入れずに直にディスプレイしたいと思いました。

しかし、ボードン袋は劣化を防ぐという目的や、計量を済ませていて売りやすいということもあり、袋に入れずに直にディスプレイする方式はちょっと慣れてから考えることにし、ここは素直にボードン袋を使うことにしました。

ちなみに、前述の直売所での販売を申し込みに行った時、必ずボードン袋に入れるように言われました。普通のビニール袋に入れるのは曇るからダメ、中身の見えないレジ袋のようなものも苦情につながるからダメとのことです。中身の見えないレジ袋に入れられていたものを買ったお客さんから「袋の下の方の野菜が傷んでいた、傷んでいるのを分かっててわざと見えないようにして売ったんだろう」と以前クレームがあったそうです。

直にディスプレイされている野菜(バンコクのマーケットにて撮影)

POPの書き方は、岩崎則重著「八百屋さんのPOPの作り方」で勉強しました。太いマジックで数字を書く際の「書き順」なども丁寧に解説があり、大変参考になりました。kindle unlimitedなら無料で読めます(2022/06/28時点)。

POPを書くペンは、水性のポスカにしました。発色がきれいで重ね書きもできるのでオススメです。

買おう買おうと思っていたバッグシーラーもようやく購入。今まで手でやっていましたが、これを買ってからはガシャーンと一瞬でできるので、気持ちいいです。

計量はどうしようか

すっごい細かい点ですが、意外と迷ったところなので書いておこうと思います。

収穫物は必ず計量して記録しているので、家には20キロの計量ができる計りがあります。畑で直売をするとなるとこの計量をどうしようか、と迷いました。

せっかく畑で直売するならできるだけ新鮮なものを売りたいので、収穫してキレイに調整してすぐに売りたいところですが、大きな計りはさすがに毎回畑に持って来れません。販売時の袋詰め用の2キロの計りも用意していてこれは畑に持っていけますが、あまりちまちま測るのも面倒です。だから収穫物を一旦家に持って帰って計量し、翌日に売るとした方がいいものか・・・

とりあえず今回は玉ねぎなので、そこまで「採れたて」は追求しなくていいだろうと考えて、収穫→持ち帰る→収穫の計量→調整→販売用の計量→袋詰め→翌日売る、という段取りにしました。

すごく細かいことですけど、意外とこういうのって迷いませんか・・・?圃場のすぐそばに調整作業をする作業場があれば全く悩む必要はないのでしょうけど・・・

値段設定はどうしようか

自分の商品を安売りしてはいけない、価格競争になって疲弊するだけだから、とよく聞きます。実際、私がモノを買うとき、値段が安すぎるものってそれだけの価値しかないものだと思えてむしろ買わないことが多いです。また、一度付けた値段は、後で下げるのは簡単だけど、上げるのは難しいとも聞きます。

現在の玉ねぎの値段は、普通のスーパーでは普通サイズ一玉100円くらいで、主婦目線で見るとこの値段設定は高いと感じてしまいます。

しかし、自分で育てた玉ねぎを生産者目線で見ると、暑い中で種まきし、一本ずつ移植し、もみ殻で防寒対策をし、玉ねぎは肥料喰いなので米ヌカ油かすを定期的にほどこし、手で雑草を取り除き、ようやく収穫、この間の約半年、農薬化学肥料はもちろん使っておらず、一玉100円は激安と思います。

ただ、近くの農家さんが、玉ねぎは機械で収穫するとおっしゃっていました。機械でやると割れてしまうのもあるけど早いということです。そういうのを聞くと、手作業でやって手間暇かかっているというのは私の都合と言えなくもないです。

また、「ストーリーでモノを売れ」というのも最近よく聞きますが、いや、ここは商売の聖地、大阪なんで、ストーリーだけではなかなか難しいのでは?少なくとも私はストーリーでモノを買うというのはまずないし、と考えました。一方、安すぎると逆に、なんか訳ありのものなんじゃないの?と思ったり、それだけの価値しかないもの、と見えてしまうこともあるなぁとも考えました。いや、本来的には、原価計算をして採算の取れるようにするというのが価格設定の基本では?

原点に帰り、今回は地域のみなさんに玉ねぎたっぷりのカレーを食べていただきたいという思いからスタートしているということもあるので、今回はお求めやすいお値段設定にしました。

500グラム250円です。

実は最初は500グラム200円にしてたのですが、夫がFacebookに投稿したところ、ちょっと安すぎるんじゃないですかという声をいただいて、250円にしました。途中で値上げするのって、ちょっとやらしいですよね・・・。反省です。

こんな感じのお店になりました

夫が、私がダイソーで買ってきたスダレやスノコと共に、120センチの支柱と結束ヒモを駆使してこんな感じに作ってくれました。

本来は、「農薬・化学肥料不使用」の前に「栽培期間中」の文言をつけないとガイドラインに引っかかってアウトです。この後この左側のPOPは引っ込めました。

一応、政令指定都市でそれなりに都会である堺市ではまず見かけない光景です。もうちょっと何とかならんかったんかいとツッコミどころ満載ですが、とにかくまずは「やってみる」ことを第一に考え、お店(?)をオープンしました。

ちなみに、普段、私自身が買い物をする時は現金をほとんど使わずキャッシュレス決済にしているので、せめてPayPayのQRコードくらいは設置したいと考え、申請しようとしました。すると、申請の必要書類として色々な書類と共に「店の風景写真」が必要と記載されていました。店の風景写真って、この写真?いやいや待て待て、ちょっと待て、一旦落ち着こう、と画面を閉じました。この写真を提出したら、申請を受付した担当者はお茶を噴き出すに違いない、そしてランチタイムには「今日超面白い申請が来てさぁ」などと話題になること間違いなし。

今はいろんなキャッシュレス決済端末が出てきていて、たとえば下のスマレジのようなものもあります。これだとPayPayも対応しているので、PayPay単独で申請する必要はなさそうです。

○スマレジはこちら↓

まだいろんな会社と比較検討できてないのですが、屋外で使用できるというのは私にとっては絶対条件なので、ゆくゆくは検討したいと思います。月額使用量がかかるので、もうちょっと軌道に乗ってから・・・。

販売の結果

さて、お店を開いた結果、どうだったか。

ビックリするくらい、売れなかったです。っていうか人が通らず、ここってこんなに人通りなかったっけ・・・?と自分の観察眼のなさにびっくりしました。あ、人が通ったと思ったら、犬の散歩のおじいちゃんとか、マラソンのトレーニング中の中学生とか・・・

そもそもここで野菜を売っているということに気づいてもらえないので、のぼりとか立てないとダメなのかな。アマゾンでこんなのぼりを見つけましたが・・・↓

でも、夫のFacebookの投稿を見て、買いに来てくださった方がいました。これまでも夫の友人ということで色々お世話になった方なのですが、涙が出るほど嬉しかったです。その方もまたFacebookに投稿してくださって、買いに行きたい!というコメントをたくさんいただき、こんなにありがたい話があるだろうかと感謝感謝でした。

他にも、郵送してほしいとご注文をいただいたりして、玉ねぎは完売しました。ありがたい話です。あとは売り物にならないような小さなものばかりなので、これは自家消費用にします。

いつ畑にいていつ販売しているかが不明確だとなかなか来ていただけないのかなと考え、ツイッターを開設しました。今後、販売情報や小ネタなどを投稿していこうと思います。@narinari_farmです。ぜひフォローをよろしくお願いします。

「売ってみた」感想

この一連の「売る」という行為はなかなか大変でしたけど、途中からワクワクし出して、楽しいと思えてきました。検品、パッケージを選ぶ、ポップを書く、値段設定、集客方法を考える、お金の用意、買ってくれた方への感謝、経理処理。野菜を作ることとは全く違う脳みそを使ってクタクタになりましたが、家庭菜園では味わえなかった楽しさだなと思いました。

また、勇気の要る一歩を踏み出した人にエールを送るというのはなんと素晴らしいことなんだろう、私はそんなことしてこなかった気がする・・・と人生で大事なことを一つ学んだ気がします。

猛暑の間は、こちらの直売所だと傷んでしまう恐れがあるので、どうしようか考え中です。

地産地消を目指したいのでネットで売るのは後回しと考えていたのですが、ひょんなことからネットで売ることも考えるようになりました。次回はネットで売ることについて書きたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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