【農地探し(後編)】借りた農地を1年使ってみて

前回のブログで、農地を借りるまでについて書きました。

※前回のブログ
【農地について(前編)】農地を借りるまでの経緯

念願の広い農地を借り、農業委員会の許可もおりて、ウキウキの毎日でした(ウキウキて。。。)この春で一年になるので、今までのブログでも断片的には書いてきましたが、改めて、借りた農地の詳細や一年使って思うことをまとめてみたいと思います。とは言ってもまだ1年なので、分かったような分かってないようなといったところですが、これから農地を借りようとしている方の参考になれば嬉しいです。

<目次>

  1. 契約について
    • 行政が入ってきちんと契約を交わした
    • 賃貸料
    • 水利、その他
    • 固定費はできるだけ軽くしておきたい
  2. 立地は?
    • 大都市が近いのはメリット
    • 獣害はあまりない
  3. 自宅からの距離は?
    • 体力がない私には近いのが一番!
  4. 圃場の形状は?
    • きれいな四角だと使いやすい
    • 法面の管理が結構大変
    • 欲を言えば圃場の中に駐車スペースがあれば
  5. 日当たりは?
    • 日陰もありがたい
  6. 周辺の農家さんは?
    • 無農薬で怒られないかという不安は・・・
    • めちゃくちゃ見られてる・・・
  7. 土の状態や水はけは?
    • 元田んぼだからか、水はけは悪い?
    • (重要!)上流に田んぼがあると水が染みてくる
    • 明日、土壌検査を受けます

1.契約について

行政が入ってきちんと契約を交わした

農用地利用集積計画の利用権の設定という契約をしました。契約は3年ですが、解除条件付となっていて、きちんと管理できていなかったら途中でも利用権を解除されるという内容です。(実際、前回借りていた人は途中で来れなくなって草ボウボウになっていたので契約途中で解除となったようです。)

こういった契約書類は市役所の人が全部揃えてくれて、地主さんも私もサインするだけでした。蛇足ですが、なんと印鑑廃止の流れを受けて印鑑も不要とのこと。こんな大事な時くらい印鑑押してもいいんやで、と持っていった実印を片付けながら心の中で呟きましたが・・・。

公告とか農業委員会の許可の取り方とかもどうやるんだかさっぱり分かりませんが、全部市役所の人がやってくれました。2ヶ月後くらいに結果が郵便で届いた時にはホッとしたものです。

前回も書きましたが、家庭菜園ではなく農業をしようとするならば、行政も入ってきちんと契約を交わしておくと安心です。地主さん側としても、数年だけの予定で貸した土地が結果的に何十年とかになってくると、離作料がどうとか等の権利関係がややこしくなってくる恐れもあるでしょうから、闇耕作(闇小作?)はトラブルのもとなので、行政が入って契約書を交わしておくのは地主さん側としても安心だと思います。

近くのおじいちゃんは、行政は入らないけれど、自分で契約書を作って家庭菜園の人に貸すというのをされているようです。ほんと、しっかりしてはる・・・。

賃貸料

面積は860㎡ほどです。賃貸料ですが、草刈りを頼むとお金がかかるし耕作してくれるだけで助かる、無料でいいですと言ってくださいました。お言葉に甘えさせてもらいました。

相場としても、無料または格安が多いようで、実際、市役所から紹介されたいくつかの農地は全て賃貸料は無料でした。とはいえ、先祖代々耕してきた大切な土地を無償で貸してくださるのは大変ありがたく、責任を持ってきちんときれいに使わないといけないなと思います。

水利、その他

水利ですが、以前のブログでも書きましたが、ここは元々田んぼで川から水路を通して水を引いてくるようになっており、年1回の水路掃除に出席すれば水路の水を使ってOKとなっています。もしもこの水路掃除を欠席するなら3000円を支払わないといけません。逆に言えば3000円支払って水路掃除を欠席するということもできますが、新米なので何としても出席しないと!

他の条件としては、農地を返却する際には、あぜの草刈りをし、全面耕運をしてから返してくださいということでした。

固定費はできるだけ軽くしておきたい

というわけで、賃料は無料、水利もほぼ無料!(ジャパネットタカタみたいやな。)

つまり、農地の賃貸借に関する固定費は実質ゼロです。市民菜園では25㎡に3万円(2年)払っていたのは何だったんだと思ってしまいそうになりますが、市民菜園はあぜの草刈りなども管理人がしてくれる等を考えるとまあそんなもんだと思います。

「固定費はできるだけ軽くしておかないと、いざという時に経営を圧迫する」というのは管理会計の基本。新規就農では固定費はできるだけ抑えておきたいところなので本当に助かります。

なお、この農地には水道はありません。実際に使う水についてはどうするのか、これについてはちょっと長くなりそうなので次回書きます。(農地探しシリーズは前編・後編で終わるつもりだったのに終われませんでした・・・すみません。)

2.立地は?

大都市が近いのはメリット

自然栽培をするなら、田舎の方に行く方が水も空気もきれいで理想的なのかもしれませんが、私が借りているところは大阪郊外のいわゆるかつての「ニュータウン」で、駅と駅のちょうど中間くらいの田園風景が残る場所にあります。

車で少し運転すれば道の駅がいくつかあって、(運転さえできれば)販売先に困らない割と便利な場所です。最近「やさいバス」の運行もスタートしたので、大都市である大阪の飲食店もターゲットにできるというのはなかなか大きなメリットですが、今のところ、そのメリットを活かせておりません・・・。頑張らねば。

獣害はあまりない

上述のように比較的都会な場所になります。都会の一番の良さは、獣害が少ないことかもしれません。もちろん都会でも獣害はゼロではないですけど。

研修先の農家さんがうちの畑に来てくれた時に「周りの農家さんも全く電柵を使っておられませんね、獣害はほとんどないのでしょうね」と話されていました。農地を見る目線がそういうところなのかと恐れ入った次第ですが、本当にそうで、鹿や猪による被害は今まで一度もありませんでした。鹿のような大型動物による獣害の被害というのは本当に大変だと聞いていますので、その点では助かっています。

ちなみに、イタチは何度か出ましたが、野菜を食べている様子はなさそうです。↓

イタチ

ただ、カラスは多いので、トマトはかなり被害が出ました。次の夏は効果的なテグスのやり方を調べて対策をするつもりです。

なお、今のところは人間による窃盗はないですが(盗むほどのものがないから・・・)、結構ひどいものがあると聞いています。ニンニクだと値段の高い「ホワイト六片」だけ盗まれたりしてプロの仕業じゃないかとも聞きます。柵も何もない農地なので、そんなプロに狙われたらどうしようもないですが、割と人目につきやすいところなので、日頃から周囲の農家さんと良好な関係を作り、地域で防犯体制を作るという感じにできればと思います。野菜が高騰すると市民菜園でも窃盗が増えていたので、そういう状況になれば改めて対策を考えるつもりです。

3.自宅からの距離は?

体力がない私には近いのが一番!

圃場へは、自転車で15分ほどの場所にあります。自宅のすぐ目の前が圃場というのが一番理想ですが、それを求めると家ごと借りないといけないので、断念しました。

農地を探し始めた当初は「どこでもいいから借りれればいい」と思っていましたが、詰めの段階では「自宅から自転車で通える圃場」というのを絶対の条件にして探しました。

私は恥ずかしながら運転が苦手で、遠いところだと運転をして通うのが苦痛になってしまう予感があり、しんどくなって途中で辞めてしまうのだけは絶対に避けたかったので、圃場へ通うのが精神的にも物理的にも楽なところにしたいと考えました。実際に自転車で15分程度で通える距離だとちょこちょこ通えるし、私にはこのスタイルが合っていて良かったなあと思います。

(週末は夫の運転で通います。車なら多少遠くてもいいのでは?と思うところですが、やはり運転する夫も、疲れている時にこの近さはありがたいとよく言ってます。)

遠くても空気も水もきれいな田舎がいいという考えもあれば、近くて何かあった時にすぐに行ける場所がいいという考えもあると思います。私は自分はそんなに体力がないと自覚しているということもあり、色々と迷った結果、私の場合は自宅に近くて通いやすいところというのを何よりも優先したいと考えて探しました。(ベテランの人は、土の状態などをまずは見るのだと思いますが・・・。)

本当は、自宅との距離は「ちょっとお手洗いに行ってくる」というくらいの近さが嬉しいところですが、自転車で15分だとお手洗いにはちょっと遠い・・・。近くにたまたまコンビニなどもないので、お手洗いはどうしても我慢してしまいます。圃場から駅までは自転車で5分くらいですが、そこまでして行くほどでもないですし・・・。お手伝いに来てくれる人にも「お手洗いは近くにないからね」とあらかじめ伝えるようにしています。

4.圃場の形状は?

きれいな四角だと使いやすい

南北に長い長方形です。(正確な長方形ではないですが。)

あまりカーブしていたりするとトラクターが使いにくいとか畝が立てにくいとかいろいろあるようで、やはりきれいな四角が好まれるようです。実際、ほぼ長方形という形は使いやすいです。

「畝は南北に立てるのが基本」なので南北に畝を立てていきましたが、少量多品種を育てるのであまり長すぎる畝も使い勝手が悪いと考え、真ん中に横切るような形の通路を作りました。耕運機の通り道としてもこの通路があった方が断然やりやすいし、排水ルートを設けるという点でも一番最初にこの通路を作っておいて良かったと思います。こんな感じ↓

なお、うちは大きなトラクターを使う予定は今のところありませんが、使う予定のある場合は乗り入れることができるかどうかもしっかり見ておく必要があると思います。

法面の管理が結構大変

よって使いやすい形状の農地ですが、難点は2つあります。1つ目は法面があること。

法面があることで、夏場はその草刈りに結構時間が取られています。草刈りは夫がやってくれますが、踏ん張って刈払機をかけるので、体力の消耗が激しいらしいです。しかも、クズのツルなどのちょっと厄介な雑草がはびこっていてなかなか大変です。

以前、農業スクールに通っていたときに、「法面がある農地では、雑草を抑えるためにシロツメクサやクローバーの種をまくと良い」と教わったことがあります。これを思い出して春にシロツメクサの種を蒔きましたが、今のところ、クズやヤブカラシなどの方が断然強いです。

ちなみに、一番最初にこの農地に来て草刈りをした時は(前回のブログ参照)、この法面にはセイタカアワダチソウの立ち枯れしたものがめちゃくちゃに茂っていました。セイタカアワダチソウの枯れたものは、支柱に使えるくらい棒状に硬くなっており、刈るのはかなり大変なのですが、夏場にまめに刈っているとあっさり無くなりました。「セイタカアワダチソウは割と根絶しやすい」と本で読んだことがあって半信半疑でしたが、本当にその通りでした。

ともあれ、法面がない畑だともうちょっと夏場の草刈りが楽なのになぁと思います。

欲を言えば、圃場の中に駐車スペースがあれば

難点の2つ目は、圃場の中に駐車スペースがないこと。

小さい車で四駆なら乗り上げて入れるくらいのスペースがありますが、ちょっと難しいので、畑に横付けして停めています。

うちの畑の前だけ少し道路が広くなっていて、横付けして停めるスペースは十分にあるんですが、駐禁エリアではないので、ご近所さんらしき車も結構ずらっと停まっており、畑に行ったらうちの車を停める場所がないということが何度かありました。だから、横付けできるだけで十分助かるのですが欲を言えば、圃場の中に駐車スペースがあれば安心だったかなと思います。(もちろんその分、作付け面積は減りますが。)

また、“ちょっと広くなっている畑の前の道路”というのは、ドライバーにとって休憩場所に使うには持ってこいなのか、ここで車を止めて飲食をするドライバーが多いです。別にそれは構わないんですが、ペットボトルやお弁当のゴミをそのまま置いて行かれることがしょっちゅうで、これには辟易としています。畑の前が汚いのは嫌なので時々ゴミ拾いをしますが、またすぐに捨てられてしまい・・・。これには参っています。

5.日当たりは?

日陰もありがたい

西側に建物がありますので、午前中は日当たり良好ですが、午後からは少しずつ日陰になります。

半日日陰でも、午前中に太陽が当たればまだ大丈夫と聞きます。早くから日陰になる西の方には、湿り気を好む里芋を植えたりしました。

何より、過酷な夏の農作業において、身を守る逃げ場所があるというのは嬉しいです。熱中症ギリギリでめまいがしてきた時でも、日陰に行って水分補給をすれば持ち直せて助かったことが何度もありました。

午前中は逃げ場がないので、遮光率の高い日傘を常に用意し、いざという時にはそれで日陰を作っていました。休憩ができる小屋みたいなのがあればいいんですが、耕運機収納用のサウナみたいになる小屋しかありませんし、午後から日陰ができるといいうのは、何気に嬉しい点です。

6.周辺の農家さんは?

無農薬で怒られないかという不安は・・・

無農薬でやりたいと考えていたので、農地を借りるに当たって周辺の農家さんから煙たがられるのではないかと不安に思っていました。できれば周りの農家さんも有機農家さんだといいなと思っていましたが、まあそんなことはあり得ないと言っていいくらいのことですし・・・。

無農薬で虫がくるだとか、また草ぼうぼうにして!とか、怒られるかな・・・

しかし、そんな心配は無用でした。なぜなら、私が借りる前はもっと草ボウボウの耕作放棄地状態だったからです。むしろ、きれいにしてくれて助かると言ってもらえます。

ただ、ブログでも度々書きましたが、アドバイスとして「効率が悪いから除草剤を使いなさい」とは言われます。就農して驚いたことの一つは、除草剤は使って当たり前ということです。こんなにも除草剤が使われまくっているとは思っていませんでした。農薬は使わないけれど除草剤は使う、という人もいます。私は今後も使うつもりはないので、除草剤を使いなさいと言われないようにするためにも、効率的な草刈り方法を模索中です。

めちゃくちゃ見られてる・・・

また、農地を借りて感じたことはまだあります。それは、めちゃくちゃ見られてるということ。見られてないようで、自分では気づいてないところでめっちゃ見られてます。びっくりします。

「さっき撒いてた粉はなんや?」(この時まいてたのは米ヌカです)とか、「昨日旦那と一緒に来てたな、会社休みやったんか?」とか・・・。おじいちゃん、昨日は畑に来てなかったのにどっから見てたんやろ・・・と不思議に思うことが何度もありました。このおじいちゃんだけじゃないです。束縛されてるとか監視されてるとかそんなんではないので別に苦ではないんですけど、変なことはできないなと思います。皆さん視力が良いのにも何気に驚きです。

まあ、客観的に考えると、もしも私がベテラン農家で、隣の畑にこれまで家庭菜園しかやったことありませんというペーペーの新米女性がきたとすると、農家仲間の間で「今度の子、いつまで持つか賭けよか」みたいになってると思います。「8月いっぱいくらいかな、いや、梅雨明けまで持たんで、まあどっちにしろ夏は越されへんやろな、みんなそう思うんなら賭けにならへんがな」・・・そんな会話が目に浮かびます。実際、「夏まで持つかな」とニコニコしながら言われたこともあります。

私自身、夏を越せるか自信がなかったので、とにかく畑に行くことをルーティンにして毎日通うようにしました。9月になり、なんとか夏を越せたと思う頃、明らかに周りの農家さんたちの見る目が変わってきました。これまで声をかけてこられたことがなかった方から声をかけてもらったりして、「ちょっと骨のあるやつ」みたいに見てもらえるようになったのかなと思うと嬉しかったです。

7.土の状態や水はけは?

元田んぼだからか、水はけは悪い?

これまでのブログでも何度も書いていますが、大雨が降ると途端に水が溜まります。水はけはかなり悪いと思っていますが、イセキの営業マンは、「いや、この畑は水はけいいですよ」と言っていました。畝の立て方が悪いのかも・・・傾斜をつけて排水ルートを作ったりしていますが、まだ完璧ではありません。

元田んぼの場合、水が溜まるように土の深いところに硬盤層という固い層があるので、畑にするならそれをまず破壊した方が良い、と農業スクールで習いました。重機で破壊してもいいし、それが難しいならオクラ、セスバニア、クロタラリアなどを育てて植物の根っこで破壊すればよいとのことでした。今年はちょっと色々試してみようと思います。

(重要!)上流に田んぼがあると、水が染みてくる

水路の上流部分にあるお隣は、夏場は水田になります。予想外だったのが、田んぼに水を張った後は、その近辺はうちの畑にも水が染みてくるということです。6月頃、田んぼに水を張られた後にこのことを知って「え?うそやん」って思いました。夏野菜の苗もその辺りに植えていましたが、全滅で、その後も2畝くらいは常に水たまりの状態で、夏場は完全に使えませんでした。

今年は、深い溝を掘ってそこで水を受けるなどしてちょっと対策を考えてみたいと思います。何かしら、上流に田んぼが接している農地を借りようとしている方は、水が染みてくるということを前提に考えておかれると良いと思います。重要なことなのにこんな下の方に書いてしまってすみません。

明日、土壌検査を受けます!

土の状態は、白っぽくてイネ科やスギナがたくさん生えており、ベタッとした重い感じの土です。1年間、腐食を増やそうとして頑張ってきたので最初よりはちょっとマシになったかな・・・。

ここまで書いて、7400字を超えてきました。明日、土壌検査を受けることにしましたので、土の状態の続きはまたその結果とともに書くことにします。やはり「農地について」は前編・後編の2部編成では足りませんでした・・・。余計なことを書きすぎるから・・・。長文失礼しました。

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